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リュウとツバメ [読書]

 前回の「龍」と「竜」については

https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2018-04-23)、やっぱり、高島俊男さんの『お言葉ですが・・・』(文藝春秋 1996年刊)に「龍竜合戦」という一篇がありました。 橋本首相が誕生したとき、朝日新聞は橋本龍太郎と書き、毎日新聞は橋本竜太郎と書いていて、不思議に思ったそうです。


 新聞社には、何か略字を使う社内規定があるようで、坂本竜馬とか芥川竜之介になるのかなとのことでした。ただ、数日後の毎日新聞に載った「サンデー毎日」の広告では橋龍になっており、村上龍対談坂本龍一というのもあったそうです。


 岩波書店は新聞社ではありませんが、なにか社内の決りがあって、芥川竜之介、橋本龍太郎になっているのでしょう。


 このあいだから読んでいる『目からウロコの自然観察』(唐沢孝一・中公新書)には、身近にあって知らなかったことが、たくさん書かれています。


 これからの季節、ツバメは軒下に泥で巣を作って、子育てしながろ暮らしているのかと思っていましたが、


 <街中で繁殖を終えたツバメは、秋に南国に渡るまでどこでどんな生活をしているのだろうか。まだわからないことが多いのだが、7〜8月の夕方、ヨシ原などに集まり集団ねぐらをとることがわかっている。数千、数万の大群が上空を乱舞し、一斉にねぐらに入るシーンは実に壮観である。>とのことです。


 著者は2015年8月24日、中央自動車道の談合坂サービスエリア(上り線)で、日没前後に数千羽のツバメが一気に、ケヤキの樹にねぐら入りするのを観察しています。


 サービスエリアにいた人たちは、ヒッチコックの映画「鳥」を一瞬、思いだしたかも知れません。




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キョーミと観察 [読書]

 文庫棚を眺めていて、ふと気がついたのですが、新潮も角川も文春も「芥川龍之介」なのですが、岩波は「芥川竜之介」です。 「竜」は「龍」の略字で、常用漢字なんでしょうが、文学賞も芥川龍之介賞だし、人名を略字にするのはどうかなと思います。


 岩波書店は「龍」という漢字は使わないのかというと、『橋本龍太郎 外交回顧録』という本を出版しています。最近は変えているのかと思うと、2010年に出たのも『芥川竜之介俳句集』(岩波文庫)となっています。


 こんな問題は高島俊男さんが、どこかで指摘しているのかも知れません。 森鷗外も鴎外になっているというのを読んだことがあります。 ネットの「青空文庫」は「竜」、「鴎」となっています。


 興味のあることには目がいきやすいですが、関心がないと、知らないで過ぎてしまうものです。 唐沢孝一『目からウロコの自然観察』(中公新書)には、身のまわりにある知らなかったことが種々とりあげられています。


 <ウマノスズクサの葉は、千切るとひどい悪臭がする。葉は毒性のあるアリストロキア酸を含む。葉の毒は、本来は虫に食べられないための防虫剤として機能している。ところが、長い進化の過程で、アリストロキア酸に対して耐性を獲得した昆虫が現れた。それがジャコウアゲハである。・・・幼虫は食草の毒を体内に蓄積し・・・毒蝶が誕生する。鳥やカマキリがこれを捕食して中毒症状を経験すると、二度と捕食しなくなる。>


 さらに、ジャコウアゲハの模様に擬態して、毒虫になりすまして生き延びる蝶もあるそうです。 ただ、ボーと景色を眺めていても分からない、植物や動物の営みが興味深く書かれています。


#「リュウとツバメ」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2018-04-30



 

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街歩きの収穫 [音楽]

 先日、集会場を出て、三条あたりの路地を歩いていると、すこし遅い桜が咲いていました。桜は晴れやかで、周囲を明るくします。ぶらぶらと足に任せて角を曲がったり、橋を渡ったりしていると、CD 屋さんがありました。


IMG_1924.JPG


 のぞいてみると、店主の好みなのか、録音の古いのが並んでいました。いろいろ棚を眺めていると、「こちらにも有りますよ」とおばさんが声をかけてきます。


 時間がたつにつれ、何か買わなければ・・・と焦った気持ちになってきます。何回か棚を見ていると、オットー・クレンペラーの指揮のが目についたので、二枚買ってきました。


 帰って、聴いてみると、すみずみまで神経の行き届いた、身にしみる、いい演奏でした。FM 放送もなかったころ、クレンペラーの演奏はよくラジオから流れていました。


 彼は逸話の多いひとで、寝タバコで大やけどをしたり、女性問題でケガをしたり、有名なスキャンダルがたくさんあります。 だのに、なぜこんな神々しいまでの演奏ができるのか、不思議に思うほどです。


 そういえば数日前、映画「アマデウス」のミロス・フォアマン監督の訃報が、新聞に出ていましたが、モーツァルトも逸話の多いひとだったようです。 


 クレンペラーもフォアマンもアメリカへの亡命・脱出を余儀なくされた人たちのようです。 週末の嵐で、路地の桜も花筏になってしまったことでしょう。


#「電源プラグの向きと音質」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2014-09-18


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映画の白いタンポポ [読書]

 たまたま、川本三郎の新刊『映画の中にある如く』(キネマ旬報社)を読んでいると、広島・呉を舞台とするアニメ映画「この世界の片隅に」を話題にした項に、こんな文章がありました。


 <この映画で呉には、白いタンポポがある、と知った。普通、タンポポの花は黄色い。しかし、九州の柳川では白いタンポポが咲く。だから北原白秋は「廃れたる園に踏み入りたんぽぽの白きを踏めば春たけにける」と詠んだ。呉でも、白いタンポポが咲いたのか。>


 どんな場面なのかは分かりませんが、タンポポの白さが、北原白秋の短歌の記憶を呼び覚ましたのでしょう。 白秋にはタンポポのでてくる詩もあります。


 川本三郎が「キネマ旬報」に書いているコラム「映画を見ればわかること」のシリーズは楽しみにしています。今回で五冊目になります。 ほとんどは観たこともなく、観ることもない映画についての話が、なぜおもしろいのか不思議ですが、旅人に、知らない土地の話を聞くようなものかもしれません。


#「映画は読んでいる」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2014-09-25

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タンポポの話 [雑感]

 <長崎のタンポポは白っぽい>と長崎生まれの評論家・山本健吉が書いています。四国九州地方にてはシロバナタンポポのみを見る処あり、とのことです。いまはどうかわかりませんが・・・。


 上方落語に「西行鼓ケ滝」というはなしがあり、そこでは西行法師が「伝え聞く鼓の滝を来て見れば岸辺に咲けるたんぽぽの花」と詠んだことになっています。


 タンポポはつぼみの形が鼓に似ていることから、つづみ草と言われていたそうですが、こどもたちは、鼓の音からタンポポと呼んだそうです。


 西行はその夜、宿をかしてくれたお礼に、山家の住人に、先ほどの歌を披露します。すると爺さんは「初句は鼓だけに、音に聞く、とした方が良い」といい、また婆さんは「第三句は鼓だけに、うち見れば、がいい」などと添削する。 西行は憮然とするが・・・


 ふと目が覚め、夢だったと気づく。「歌の上手と思い上がっていた、ばちがあたる」と西行は恐れる・・・「鼓だけにバチはあたりません」というオチがついています。


 兵庫県川西市をはしる能勢電鉄に「鼓滝」という駅があるそうです。






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