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歌詞の世界 [音楽]

 洋楽を聴いていて、ふと気になって歌詞を見てみても、なかなか理解できません。このあいだも、昔から F.シナトラなどが歌っている「THE  LADY IS A TRAMP」というスタンダードがありますが、「トランプ」ってどういう意味だろう? と辞書を引いてみて驚きました。


 ゲームに使うカードは「trump」で、「tramp」は別の言葉で発音も異なっています。辞書*によれば動詞としては「どしんどしん歩く」といった意味ですが、名詞では、(1)どしんどしんと歩く音 (2)徒歩旅行 (3)浮浪者(俗)浮気女 (4)不定期貨物船 とあります。


 ネットで歌詞の和訳を探してみると「気まぐれ女」とか「あばずれ」などと訳していますので(3)の意味なのでしょう。♪ The lady is a tramp ♪ と唄ったときの微妙な感覚はネイティブにしか分からないのかも知れません。軽く歌われているので、冗談気分なのでしょうか? 作詞 はロレンツ・ハート、作曲 リチャード・ロジャースで「MY FUNNY VALENTINE」などで知られる名コンビです。


 ちなみに「trump」のほうは「切り札」という意味だそうで、ゲームに使う「トランプ」は英語では「cards」と言うそうです。元大統領は Trump」です。


  I get too hungry for dinner at eight

  I like the theater but never come late

  I never bother with people I hate

  That's why the lady is a tramp 


 上流夫人は劇場には遅れてやってくるようです。過激な歌詞です。W.ジンサー**という人は作詞家のロレンツ・ハートについて <ハートが人間を見つめる目はいつでも冷めていた。(中略)金持ち、上品ぶった人・・・などのあさましいふるまいが風刺の対象となる > という風なことを書いています。


 英語というのは、いくつになってもよく分からず、必要に迫られて辞書を見ると、また未知の世界が開けます。唄を聴いていても、ただ耳を通り過ぎるだけです。


*『新英和中辞典 第5版』(研究社)

**ウイリアム・ジンサー『イージー・トゥ・リメンバー アメリカン・ポピュラー・ソングの黄金時代』(関根光宏訳 国書刊行会)

#「ポピュラー・ソングの楽しみ」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2022-02-11



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雨の日の音楽 [音楽]

 雨の季節になりました。しばらくは鬱陶しい天気をやり過ごすほかありません。雨は唄によく歌われています。雨の唄でも聴いて楽しむのもいいかも知れません。ひとにより時代によりいろんな曲が思い浮かぶことでしょう。


 「雨がふります 雨がふる」、「あめあめふれふれ かあさんが」とか「雨はふるふる 城ヶ島の磯に 利休鼠の雨がふる」という北原白秋の作詞に始まり、「あなたを待てば雨が降る」や「小ぬか雨降る御堂筋」、「雨雨ふれふれ もっとふれ」など雨に関わる唄を探せば際限がありません。


 歌詞にはそれぞれ工夫がありますが、「利休鼠の雨」とは北原白秋しか思いつかない言葉でしょう。利休色は抹茶の黄緑ですが、それに灰色が混じった色のようです*。なんとも渋い雨の色です。


 洋楽ではミュージカル映画『雨に唄えば』や映画『明日に向って撃て』の主題歌『雨にぬれても』が思い出されます。十代のころラジオからは『雨に歩けば Just Walking In The Rain』とか『悲しき雨音 Rhythm Of The Rain』がよく流れていました。ボブ・ディランには意味深長な『雨の日の女』があり、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)には『雨を見たかい』という反戦歌ともいわれた唄がありました。


 ジャズ・ボーカルではスー・レイニー(Sue Raney)が自分の名前にちなんで、雨にまつわる唄を集め『雨の日のジャズ Songs for a Raney Day』というアルバムを作っています。


 カンツォーネでジリオラ・チンクェッティの『雨』は 1969年に流行りました。ボサノバの『三月の雨』は現代詩風の歌詞ですが、南半球なので夏の終わりの雨なのでしょう。


 もっと古くは、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番が「雨の歌」と呼ばれています。第3楽章に自身の歌曲『雨の歌』の旋律が使われているからだそうです。梅雨の時期に聴くにふさわしい、利休鼠の似合う曲調です。


 梅雨があければコロナ騒動も終わるのでしょうか? 4回目のワクチンはどうするか? 先日の念のための検査の結果はどうということもなく、夏には何処かへ出かけてみようか? 雨の日には取り留めなく思案にくれます。


 *『色の手帖』(小学館)





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さわやかな五月に [音楽]

 野山は新緑が鮮やかです。この時節にふさわしい音楽、ベートーヴェンの交響曲第6番は「田園」と呼ばれています。原題 Pastorale の訳語です。では、日本で田園という言葉がいつからあるのかと思ってみるとよく分かりません。田園調布といった地名とか、『田園の憂鬱』という小説の題名などはすぐに思いつきますが、いずれも近代のものです。国語辞典をひいてみると平家物語には出てくるようですが「でんおん」と読んだようです。


 古く陶淵明(365-427)は田園詩人といわれ、「歸園田居五首」という詩があります*。


      <一>

 少(わかき)より 俗(せけん)に適(うけいれら)るる韻(かわいげ) 無く

 性(うまれつき)(もともと)(おか)(やま)を愛(この)

 誤(あやま)ちて 塵網中(よのしがらみ)に落ち

 一去(たちまちすぎたり)三十年

 羈鳥(たびのとり)は 旧林(もとのはやし)を恋(した)うもの

 池魚(いけのうお)は 故淵(もとのふち)を思うもの

 荒(あれち)を 南野(なんや)の際(はて)に 開かんと

 拙(せつ)守りて 園田(いなか)に帰る

                 (後略)


 田園を好む気持ちは同様なのか、ベートーヴェンは「田園」の各楽章にコメントを付けています。

 第1楽章 田舎に着いたときの晴れ晴れとした気分の目覚め

 第2楽章 小川のほとりの情景

 第3楽章 田舎の人々の楽しい集い

 第4楽章 雷・嵐

 第5楽章 羊飼いの歌。嵐のあとの感謝に満ちた気持ち


 爽やかで快活で、若葉や小川のせせらぎにこころが弾んでいる音楽です。人間には「田園」というものを理想郷とする東西に共通した夢のような気持ちがあるのかも知れません。CDでは、K.ベーム指揮、ウィーン・フィル(1971年録音)を好ましく聴いています。


*竹内実 萩野脩二『閑適のうた 中華愛誦詩選』(中公新書)


 

  




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ポピュラー・ソングの楽しみ [音楽]

家族からチョコレートをもらって、おやつに摘んでいます。バレンタインといえば「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」という唄が思い出されます。チェット・ベイカーの歌声やマイルス・デイヴィスの演奏が耳に残っています。


 題名でファニー(funny:滑稽な)というように、歌詞をみると Your looks are laughable/unphotographable (あなたの容姿はお笑いぐさで写真にもできない)と散々な言われようです。それでもいいと言ってくれるのだから有難い唄です。


 これは L.ハート作詞/R.ロジャース作曲ですが、わたしがアメリカの古い唄を聴くようになったのは、ローズマリー・クルーニーという歌手がコール・ポーターが作った唄を歌った CDを買ったのがきっかけでした。


 コール・ポーターの唄は「 I'VE GOT YOU UNDER MY SKIN 」とか「 I CONCENTRATE ON YOU 」などと言葉の使い方が新鮮で、どんな意味だろうと興味が惹かれます。これらはどちらも「あなたに夢中/とりこ」といった意味のようです。「 LOVE FOR SALE 」などと放送禁止になった曲もあります。


 コール・ポーター(1891-1964)について、< こうしたスラブ風の曲調や中南米風のリズムが、どのようにしてアメリカ中西部出身のプロテスタントの少年にもたらされたのか(中略)ほかのどのソングライターの曲とも違っていたーーー(中略)コール・ポーターがわれわれに遺してくれたのは、永遠の若さという幻想なのだ。 >と記していた本*がありました。


 ヘレン・メリルの声でおなじみの「 YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO 」は以前、「帰ってくれたら嬉しいわ」と訳されていましたが、意味の取りにくいシャレタ英語です。最後の「TO」は何なのか? 


 IT WOULD BE SO NICE TO COME HOME TO YOU  ということなんだそうです。「YOU」を強調して前に出した構文になっているのだそうです。意味は「君が待つ家に帰れたらとても素敵なんだけど」といった感じです。戦地の若い兵隊が故国の恋人に語りかけている雰囲気です。唄を聴いているとその背景にいろんなものが見えてきます。


 *ウイリアム・ジンサー『イージー・トゥ・リメンバー アメリカン・ポピュラー・ソングの黄金時代』(関根光宏訳 国書刊行会)


#「聞き流していると」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2015-08-27



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ブルックナーの世界 [音楽]

 気になりながらそのままになっている事は種々ありますが、一度、ブルックナーの交響曲を第1番から順に第9番まで聴いてみようと、昨年末から取り組んでみました。第4番「ロマンチック」と第7番は、好みの曲なので、長年いろいろな指揮者や楽団の演奏で聴いてきましたが、他の曲にはあまり馴染みがありません。


 ブルックナー(1824-96)は日本でいえば文政7年にオーストリアで生まれています。勝海舟の1歳下で、ブラームスより9歳年上ですが、晩成の人で、教会のオルガン弾きを長年務め、作曲家として活躍したのは明治時代です。


 交響曲第1番、第2番、第6番は今回初めて聴きました。G.ヴァント指揮、ケルン放送交響楽団の演奏でした。20年以上前にいつか聴くだろうと、買っていた CDでした。馴染みがないせいもあり、やっと聴く機会があったという感慨だけでした。



 第3番、第5番は何回か聴いたことがあるのですが、どうも引き込まれる旋律がなく、今回も音が素通りしていくようでした。演奏者を変えてみれば、いつか親しめるようになるのかも知れません。


 第4番「ロマンチック」は高原や森を散策しているような、爽快な曲です。雪を積んだ山岳を眺めている雰囲気を持っています。K.ベームや C.アバドの指揮するウィーン・フィルの演奏が好みです(https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2021-10-11)。


 第7番を初めて聴いたのは 30年以上前で、C.M.ジュリーニ指揮、ウィーン・フィルでした。夏休みなどの長距離ドライブにはよく運転しながら聴きました。何年か前にはベルリン・フィル( S.ラトル指揮)が西宮の会場で第7番を演奏するというので、こんな機会はもう一生ないだろうと出かけました。大きな音だけど、家で聴く E.ヨッフム指揮、ドレスデン・シュターツカペレの方がいいなという感想でした。


 第7番は例えれば、広い夜空を眺め、天空の音を聴いている感じです。親しみやすく、星座を数えるように気分が移ろいます。交響曲で、わたしの最も好きな曲かもしれません。


 第8番、第9番は深遠な雰囲気です。それだけに近寄りがたい空間が広がります。日常的に聴くのは少しためらわれます。例えば第9番、第1楽章は深山幽谷に彷徨い込んでいく感じがします。第2楽章では天女なのか天使なのかが舞っています。第3楽章は果てしない宇宙空間を航行していきます。C.シューリヒト指揮、ウィーン・フィルの演奏は近寄りがたい音の世界を現前させます。


 聴き終わって、ブルックナーという作曲家の歩みがおぼろげにも浮かんでくる気がします。今年はどんな音楽を聴こうか・・・音楽も体験です。ときに衝撃的となります。人との出会いと同じです。音を探し求めるのは、そんな経験を求めて彷徨っているからかも知れません。



 


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ハイティンクの一枚 [音楽]

 秋が深まり近くの雑木林も黄葉の気配です。来週あたり柿の栽培地に出かけてみようかと思っています。陽光を吸収して結実した富有柿は秋の実りを実感させてくれます。いよいよ今年も終わりだと意識します。


 先日の新聞には指揮者のベルナルト・ハイティンクの他界が報じられていました。わたしが音楽を聴くようになった頃から、いつも名前が目についたような人でした。カラヤンやバーンスタインはとっくに居なくなっているのに、息の長い人だと改めて驚きました。彼は1929年生まれですから、1908年生まれのカラヤン、1918年生まれのバーンスタインに比べれば若いのですが、二人がもう 30年以上前に他界しているので、そんな気持ちになるのでしょう。それだけ彼が若くから活躍していたということで、事実、32歳で名門、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者になっています。


 ハイティンクをすごいと思ったのは、彼が指揮する、ショスタコーヴィッチの交響曲第5番(コンセルトヘボウ管弦楽団、1981年録音) を聴いた時です。こんなに悲哀に満ち、かつ美しい音楽があるのかと驚きました。均整が取れ、迫力もある演奏です。才能の結実を感じさせます。


 ハイティンクは 90歳近くまで現役だったようですが、指揮者には高齢まで活躍する人が多いようです。1時間以上、立ったまま両腕を振り続けるのは重労働のはずです。また、70歳を過ぎれば高音が聞きづらくなるのが普通です。もっとも、ベートーヴェンは難聴で、聴衆の拍手に気づかなかったという逸話がありますので、指揮には影響ないのかも知れません。


 だんだんと馴染みの指揮者が居なくなるのは寂しい気持ちです。まあ、古い CD を聴くぶんには関係ありませんが、今となっては、過去の記録は貴重な埋蔵金のように思えます。


 11月になると年賀欠礼の通知が何枚か届きますが、ハイティンクもその一枚のように感じられました。






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音に浸る [音楽]

 今日はブルックナーの交響曲第4番「ロマンテック」を聴きました。クラウディオ・アバド指揮、ウィーン・フィル(1990年)です。秋めいてきた外気のように、爽やかで芯のしっかりした演奏でした


 ブルックナーの音楽を聴いていると、音によって湧き上がってくる心象風景の中を進んでいく気持ちになります。第1楽章では森の小道を辿って行き、ふと見上げると雪を頂いた山嶺が見えたりする。


 第2楽章では、夕映えの空を雲がゆっくりと流れていく。第3楽章では馬に乗って草原を駆ける心地よさを思います。第4楽章は山の頂から四周の移りゆく風景を眺めている。雲海が湧き、時に一陣の風が吹く。


 耳を澄ませ音に浸っていると、いつの間にか第4楽章の中ほどから眠っていたようです。気がつくと音楽は終わっていました。


 こんなに抵抗もなく深々と音の世界に入り込めるは、ブルックナーの音楽に特異的なように思います。






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チェロの音色 [音楽]

 宮沢賢治の童話『セロ弾きのゴーシュ』の影響だったのか、大学生の頃、チェロの曲のレコードを何枚か買った記憶があります。ハイドンやドヴォルザークのチェロ協奏曲とかベートーヴェンのチェロ・ソナタでした。大人になってからも、オーフラ・ハーノイとかミッシャ・マイスキーといったチェリストによる小品集の CDを聴きました。フォーレ「夢のあとに」とかエルガー「愛のあいさつ」、カザルス「鳥の歌」などが入っていました。


 チェロは音域が低いので、ヴァイオリンが頭に響くとすれば、チェロは胸で聴くように感じられます。バッハには無伴奏チェロ組曲というチェロ独奏の曲集がありますが、胸にだけ響くので、聴く時を選びます。日常的にはピアノとチェロで演奏するチェロ・ソナタとか、ピアノとヴァイオリンとチェロのピアノ三重奏曲などが音色に変化があり、演奏者どうしのかけ合いが楽しめ、聴きやすいです。


 ブラームスのチェロ・ソナタはしみじみとした味わいがあり、いいものです。ピアノ三重奏曲ではチャイコフスキーに「偉大な芸術家の思い出に」という曲があります。ピアノ、ヴァイオリン、チェロの名手たちの熱っぽい、火花の散るような演奏が聴かれます。音楽を聴く楽しみのひとつです。独奏チェロとオーケストラによるチェロ協奏曲にはドヴォルザークの奇跡のような一曲がありますが、シューマンやエルガーの曲にも心が惹かれます。


 『セロ弾きのゴーシュ』では野ねずみの母親がチェロを練習しているゴーシュに言います。


 「はい、ここらのものは病気になるとみんな先生のおうちの床下にはいって療(なお)すのでございます。」

 「すると療るのか。」

 「はい。からだ中とても血のまわりがよくなって大変いい気持ちですぐ療る方もあればうちへ帰ってから療る方もあります。」


 宮沢賢治はチェロの音に音楽療法の可能性を感じていたのかも知れませんね。バッハの「無伴奏チェロ組曲」などを聴いていると、30分もすると、知らぬ間に眠っています。




 


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マーラーの音 [音楽]

 一度、マーラーの交響曲を第1番から第9番まで順番にたどってみようと、ここ2週間ほど、毎日のように聴いてみました。彼の交響曲は長大なのが多く、また感情移入しにくいのもあり、ゆっくりとした時間がとれる現在にふさわしい楽しみかと、取り組んでみました。


 そして、何か新しい発見があるかも知れないと期待して、手持ちの CDのうち、今まであまり聴いてこなかったものを選んでかけることにしました。


 G.マーラーは 1860年、オーストリア帝国(現在ではチェコ)生まれで、日本でいえば万延元年で、森鷗外より2歳年上です。鷗外がドイツ留学でベルリンに居たころ、マーラーは交響曲第1番を作曲中でした。また、トーマス・マンの小説『ヴェニスに死す』はマーラーもモデルになっているようです。


 1971年のヴィスコンティ監督の映画『ベニスに死す』では、マーラーの交響曲第5番の第4楽章が使われ、映画音楽として評判になりました。彼の音楽が一般的になったのは、その頃からのようです。ちなみに 1910年9月、ミュンヘンで交響曲第8番がマーラー自身の指揮で初演された時には、会場にトーマス・マンもいたそうです。


 マーラーの曲では突然、天の声のようにラッパが鳴り響いたり、葬送曲が始まったり、感傷的なメロディが出て来たり、おもちゃ箱をひっくり返したような雰囲気がありますが、いつも「死と再生」が意識されているようです。


 また、マーラーの曲を聴いていると、シャガールの絵が思い浮かぶことがあります。どことなく村の祭日のにぎわいの中にいるような、夢の中にいるような気分が似ています。


 以前からマーラーの曲では交響曲第2番「復活」を聴くことが多いのですが、若々しくて、表現がストレートで、聴き終わって穏やかな気分に浸れます。今回は O.クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団(1962)で聴きました。クレンペラーは若い頃、就職の斡旋など、マーラーの世話になっていたそうです。同時代を生きた人の演奏です。マーラーは生前は作曲家というよりは楽長・指揮者としての活躍の方が目立っていたようです。


 意外に聴きやすかったのは、R.シャイー指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1997)の交響曲第5番でした。音色が色彩的で明るく、重厚さはありませんが、こんな世界もありかと思われました。


 最近の演奏者のものでは、第6番「悲劇的」を T.クルレンツィス指揮、ムジカエテルナ(2016)の演奏で聴きました。スッキリとした音で活力もありますが、なにか猥雑さとでもいうような雰囲気に乏しく、少し違和感が残りました。マーラーの音楽には見世物小屋のようなところがあり、お化けが出たり、軍楽隊が現れたりして聴衆を驚かせたりする雰囲気もほしいと思いました。


 いつも音楽に入り込めず、苦手な第7番「夜の歌」は、この度は G.ショルティ指揮、シカゴ交響楽団(1970)で聴いてみましたが、どうしてこんな音が延々と続くのかと不思議に思え、誰か他の指揮者だったら腑に落ちる演奏をしてくれるのだろうかと、やはり理解のできないものとして残りました。



 初期のものから順に聴き続けて第9番になると、どうしても同じような曲調が耳についてくるせいか、第1ー3楽章が退屈に感じられました。第4楽章のアダージョだけを聴けばいいような気がしました。演奏は L.バーンスタイン指揮、イスラエル・フィル(1985)を選んでみました。マーラーは 36歳のとき、ユダヤ教からカトリックに改宗しています。


 1911年、マーラーは敗血症で他界しました。50歳でした。晩年、彼は強迫症状に悩まされ、フロイトに精神分析を受けています。彼の曲からはどれも不安や恐れ、希望といった要素の混在した音が生々しく放射されてきます。そんなところが彼の音楽が現代人に受け入れられる理由なのかも知れません。この2週間、剥き出しの、生々しい情感に包まれたような毎日でした。



 


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唄がよみがえる [音楽]

 何ヶ月か前、朝のテレビを見ていると宮本浩次という人が出てきて、むかし岩崎宏美が歌っていた「ロマンス」(阿久悠作詞・筒美京平作曲)を唄い出したのを聴いて、驚きました。声に込めたエネルギーの大きさに、コトダマに揺さぶられる気がしました。やや異様なスタジオでの挙動もふくめ、この人は誰なんだと興味がそそられました。


 わたしは知りませんでしたが、「エレファントカシマシ」というグループのボーカルとギターを担当しているそうです。コロナ禍で公演ができないので、自分が若い頃に聴いた曲のカバー曲集を作ったのだそうです。


 ここ二十年ほどまえから、日本でもカバー曲がよく聴かれるようになっています。アメリカでは以前から古い曲をいろんな歌手が唄い継いでいます。コール・ポーターとかジョージ・ガーシュウィンといった作曲家の名前とともに、スタンダードと呼ばれる曲がたくさんあります。カバー曲が流行るようになったのは、それだけ日本の歌謡曲が成熟してきたんだと感じます。


 岩崎宏美といえば、彼女も2003年から「Dear Friends」というカバー曲集をシリーズで出し続けています。調べてみると最近「Dear Friennds VIII」というのが出ていました。昨年亡くなった作曲家、筒美京平トリビュートということです。昭和50年の彼女のデビュー曲は彼の作曲だったそうです。今回、60歳になった彼女が歌っている曲の多くは 70年代のものですが、案外、知らない歌がほとんどでした。意識的にそんな選曲にしたのかも知れません。


 70年代は、わたしは大学生から、就職、結婚、子供の誕生といった時期でした。あの時分、わたしはどんな唄を聴いていたのか、「Dear Friends」を聴きながら思い返しています。


#「ふと口ずさむ唄」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2014-11-24

 


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