春風とともに [読書]
今日から3月ですが、新型コロナウイルス感染がどんなふうに推移するのか、微妙な段階のようです。インフルエンザのように春になれば終息するのか、気候には無関係なのか、手持ちの薬で効くのがあるのか、今月にはある程度の結果が出るでしょう。
3月の声を聞くといっぺんに春の気分になります。上田敏の訳詩集『海潮音』の巻頭には、ガブリエレ・ダンヌンチオの「燕の歌」があります。その第1連は・・・
彌生ついたち、はつ燕、
海のあなたの靜けき國の
便もてきぬ、うれしき文を。
春のはつ花、にほひを尋むる。
あゝ、よろこびのつばくらめ。
黑と白との染分縞は
春の心の舞姿。
森鷗外等による訳詩集『於母影』に続き、『海潮音』は明治38年に刊行され、上田敏は32歳でした。その影響の大きさは後日、「山のあなたの空遠く・・・」と落語のネタにもなったくらいです。
アンソロジーとしての訳詩集という領域はその後、大正になって永井荷風『珊瑚集』、堀口大學『月下の一群』、西條八十『白孔雀』などが続きますが、日本での新体詩、近代詩の勃興に寄り添っているようです。昭和になると小林秀雄訳 ランボオ『地獄の季節』、堀口大學訳 ボードレール『悪の華』というふうに個人詩集の翻訳になるようです。
彌生來にけり、如月は
風もろともに、けふ去りぬ。
新型コロナウイルスも春風とともに立ち去ってほしいものですが・・・、予防の基本は人に会わないことなので、画一的にではなく、流行地域に限定した一斉自宅待機が有効かもしれません。
コメント 0