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楽しみな本 [読書]

 先日、本屋さんの棚を眺めていると、森まゆみ『子規の音』(新潮社)という本がありました。手に取ってみると


 くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる(子規)


という歌から始まっていました。なんとも気持ちのよい書き出しです。早速、買ってきました。

 地域雑誌「谷中・根津・千駄木」が出発点の森さんにとって、根岸で暮らした正岡子規は地元のひとでしょう。『鷗外の坂』や『彰義隊遺聞』などを書いてきて、満を持して子規に取り組むという感じです。読み始めるのを楽しみにしています。


 今は、つい読みだした呉座勇一『応仁の乱』(中公新書)にてこずって、遅々として進みません。まさしく安眠のための寝る前の読書になっています。




さかなの味 [食物]

 週末は叔母や兄たちのご機嫌伺いにでかけてきました。天気が良かったので、帰り道に、十代のころに暮らしていた辺りを巡ってきました。新しい道路が通っていたり、埋め立て地に町ができていたり、街が上書きされてヴァージョンが更新されたような感じでした。


 海辺の道の駅に寄ると、ベラのこけら寿司があったので、昼食にしました。タコを一匹姿焼きにして売っていましたが、すこし観光客的すぎるかなと横目で眺めるだけにしました。瀬戸内的な食べ物です。


 自宅にかえって新聞をみると歌壇欄に

  黙黙とかつお食みては酒を酌む赤身の酸味しょうがの辛さ (正博)

という歌が載っていました。やはり、かつおには外海の魚の風格があります。



ほんとうのこと [読書]

 あたりまえのことですが、<歴史家の叙述する歴史もまた、フィクションではないものの、「物語」にはなってしまう。>と、橋本陽介『物語論 基礎と応用』(講談社選書メチエ)も書いています。


 前回の邪馬台国をめぐる歴史も語られるとともに、物語化から逃れられません。


 今日の毎日新聞を読んでいると、中森明夫という人が、<ユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー『サピエンス全史』によれば、実は人類が繁栄したのは虚構を信じたからだという。神も国家も法律も貨幣も人類が作った虚構である(動物には意味がない)。>と引用して書いています。うまいこと物語るものです。


 虚構でしかほんとうのことは表せないと、何十年も虚構に親しんできましたが、「ほんとうのこと」というもの自体が虚構だったんですね。 虚構だからこそ虚構でしか現せない。


 「本当のことを云おうか」という詩の一節が谷川俊太郎にありました。そういえば、「はじめに言葉ありき」(ヨハネによる福音書)なのでした。


#「大国主神の国譲り」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2017-05-13

大国主神の国譲り [読書]

 昨夜はモチガツオを食べました。刺身もタタキも食感がもちぃとして独特です。外見はふつうの鰹と区別は付けられず、包丁を入れてはじめて分かるそうです。鰹釣りの船は午後に帰ってくるので、夕方に新鮮なカツオが食べられます。春になるとカツオの刺身が楽しみです。


 去年から出雲のことが気になって、ちらちらと読んでいますが、岩波新書にも2013 年に『出雲と大和』(村井康彦)という本がでています。一読、ビックリするような内容でした。


 <邪馬台国は出雲系の氏族連合によって擁立された王朝であった・・・邪馬台国と大和朝廷とは繋がらない・・・邪馬台国や卑弥呼の名が『古事記』や『日本書紀』に一度として出てこない・・・三世紀前半、使者を帯方郡、さらには洛陽にまで派遣して魏王から「親魏倭王」の称号を受け、銅鏡百枚ほか数々の品物を下賜された倭の女王が大和朝廷の祖先であれば、その人物を皇統譜に載せてしかるべき・・・卑弥呼が没した頃、倭国の争乱に乗じてあらたな勢力が東に向けて移動しはじめ、やがて邪馬台国は激しい攻撃にさらされる・・・邪馬台国最後の状況は、じつは『日本書紀』が克明に記録していたのであるー。それがいわゆる「神武東征」に他ならない。>


 なぜ、三輪山(シロウサギの大国主神)をはじめ大和に出雲系の神が多く祀られているのかが理解できます。


 <・・・記紀にいう「国譲り」とは、葦原中国(=地上世界)を作り治めていた大国主神が、天照大神の命に従い、その統治権を天孫に譲るというものであった。>


 神話と歴史が仮説によってみごとに繋がり、疑問が解けていきます。そうかもしれない、そうでないかもしれない。歴史の本を読む楽しみに満ちています。


 カツオといえば神社の屋根には鰹木というのがのっかっています。むかしの人もカツオを食べていたのでしょう。


 #「出雲のはなし」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2017-01-24


出雲と大和――古代国家の原像をたずねて (岩波新書)

出雲と大和――古代国家の原像をたずねて (岩波新書)

  • 作者: 村井 康彦
  • 出版社: 岩波書店
  • 発売日: 2013/01/23
  • メディア: 新書

遊撃手への期待 [スポーツ]

 五月になるとプロ野球も熱を帯びてきます。子供のころから巨人ファンで、「巨人・大鵬・卵焼き」とか、「いなかの子は巨人ファンが多いね」とか揶揄されながら生きてきました。兄や叔父は南海ファンで、別所や長嶋を横取りしたといつまでも怒っているし、上司や同僚は阪神ファンがほとんどで、ことあるごとに江川問題を蒸し返します。阪神の負けた翌日はなるべくスポーツの話題は避けていました。


 一昨年、オリックス・バファローズに入団した宗佑磨君は好調のようです。ウエスタン・リーグで打撃成績3位です。3 番バッターで113打数35安打、打率.310、打点 9、盗塁4 です。遊撃手なので守備がよければ、1 軍昇格も間近でしょう。昨年はシーズン終盤に数試合 1 軍に出場しましたが結果が出せませんでした。


 オリックスは元は阪急ブレーブスですが、遊撃手には昔、本屋敷錦吾がいました。長嶋、杉浦とともに立教三羽ガラスといわれた人です。佑磨君も名が残るような選手になってほしいものです。