柿 あれこれ [食物]
紀ノ川べりでの散歩のあと、道の駅で富有柿を買ってきました。紀ノ川流域は柿の産地です。柿は元々はすべて渋柿で、突然変異で甘柿ができたそうです。日本で初めて甘柿が見つかったのは、1214年、相模国でのことだそうです。
里古りて柿の木持たぬ家もなし (松尾芭蕉)
渋柿には水溶性タンニンが含まれていて、舌の粘膜と結合するのだそうです。アルコールなどによる渋抜きは、タンニンを不溶性に変化させ、粘膜にくっ付かなくするのだそうです。
渋かろか知らねど柿の初ちぎり (千代女)
夏目漱石は『三四郎』で < 子規は果物が大変好きだった。かついくらでも食える男だった。ある時大きな樽柿を十六食った事がある。それで何ともなかった。> と書いています。樽柿というのは酒樽に柿を詰めて、アルコールで渋抜きしたものです。正岡子規は松山出身なのですが、西条柿だったのでしょうか。
渋柿や古寺多き奈良の町 (正岡子規)
寺田寅彦に『柿の種』という短文集があります。松根東洋城の主宰する俳句雑誌「渋柿」に連載したエッセイを纏めたものです。東洋城は松山での漱石の教え子で、紹介され子規の弟子になっています。宮内省に勤務していたおり、大正天皇から俳句について尋ねられ、「渋柿のごときものにて候へど」と答えたそうです。
秋の陽光を浴びて輝く柿の実を、しばらくは朝の果物として楽しみます。