秋だから [音楽]
秋が深まってきました。散歩をしていても木々が黄葉し、落葉を踏んで歩くことになります。この季節になると、思い出す唄があります。「秋だから」とふと口ずさんだりします。長谷川きよしの澄んだ声とギターの音色が、耳に蘇ります。
彼はわたしと同じくらいの歳ですが、レイ・チャールズやホセ・フェリシアーノと同じように盲目です。1969年に「別れのサンバ」で注目されました。
彼はサングラスをかけていますが、歌手の浅川マキに知り合って間もないころ、< 「あのね、きよし、サングラスかけてないでしょ? 私はかけた方が絶対もっとイロッポク見えると思うんだ」> とアドヴァイスされたそうです。< 僕はその頃若かったし、かなりつっぱっていたので、目がみえなくても普通の人と何も変わらないのだ。サングラスなんかかける必要ないじゃないかという考えでした。(中略)/言いにくいことをすっぱり指摘してくれたのです。> と彼は浅川マキ追悼文集のようなもの*に書いています。後に彼は初めての子供に「マキ」という名をつけたそうです。
秋だから
ひとりであてもなく
街を歩いてみたいの
落葉の舞う鋪道を
コツコツとなる
靴音だけをききながら
(作詞 葵 梨佐)
何ともない唄ですが、そういえばそんな時代もあったと思い出します。喫茶店に入ったり、手紙を書いたりはしなくなったと思いあたります。そして、秋だからといって、何かが起こるわけでもないと分かっているのですが・・・。
*喜多條忠責任編集『ちょっと長い関係のブルース 君は浅川マキを聴いたか』(実業之日社)