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秋の句歌でも [雑感]


 いつの間にか、秋がやって来ました。10月になって、日暮れが早くなり、慌てて外灯を点けたりします。早朝に目覚めても、まだ外は暗いままです。庭には萩の小花が揺れています。


  白露(しらつゆ)や茨(いばら)の刺(とげ)に一つづゝ (与謝蕪村)


 蕪村の繊細で技巧の鮮やかさには、今更ながら驚かされます。涼しくなった朝の空気が白露に結晶しています。



  (いも)の葉にこぼるる玉のこぼれこぼれ

         小芋は白く凝(こ)りつつあらむ   (長塚節)


 子供のころ、祖母の作っていた畑の里芋を思い出します。大きな葉にころがる玉の露にみとれたものです。 いまだに小芋の煮付けはあまり好物ではありませんが・・・。



  鶏頭の十四五本もありぬべし  (正岡子規)


 たしか中学か高校の教科書で知った句だと思いますが、以来六十年、ずっと頭にこびり付いたままです。以前、根岸の子規庵を訪れたおり、狭い庭を見てまず思ったのは、ここに鶏頭が植っていたのかということでした。そういう意味では、この鶏頭は立石寺の蝉と同じ程に存在感が在ります。



  こほろぎのこの一徹の貌(かほ)を見よ  (山口青邨)


 言われてみれば、鳴いているコオロギの顔は頑固そうです。一夜、いちずに鳴き続ける虫の性を思います。目の付けどころが面白い。



  さわやかに流れて来てはひるがへり

      風にい向ふ蜻蛉(あきつ)の群(むれ)は (中村三郎)


 湿度の低い秋風が感じられ、トンボの群れを目で追う楽しさにひたります。こうなれば秋本番です。中村三郎は若山牧水の門下の歌人だそうです。言葉による表現も上手くできた手品のような一面もあります。今年の秋ははどこか高原にでも出かけられればいいのですが。





句歌歳時記〈秋〉 (新潮文庫)

句歌歳時記〈秋〉 (新潮文庫)

  • 作者: 山本 健吉
  • 出版社: 新潮社
  • メディア: 文庫

  

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