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何を考えていたのか? [読書]

 名前は知っていても、その人が具体的にどんな考えの人だったのかは、案外分からないものです。『11人の考える日本人 吉田松陰から丸山眞男まで』(文春新書)は音楽評論でも知られる思想史研究家の片山杜秀が、幕末から戦後までの11人を取り上げて、その人の考えたことを分かりやすく解説した本です。



 2月程まえ新聞の書評欄で見かけ、興味がわいたので読んでみました。著者の片山杜秀という人も話題になる著書が目についていましたし、選ばれている11人・・吉田松陰、福沢諭吉、岡倉天心、北一輝、美濃部達吉、和辻哲郎、河上肇、小林秀雄、柳田國男、西田幾多郎、丸山眞男・・にも多少関心がありました。いずれにせよ手軽にこれらの人々のエッセンスが片山流に剔出されるのを読めるのは、新書本の醍醐味です。



 山口県・萩に出かけたおり、松下村塾は見学しましたが、さて吉田松陰という若者が幕末に、何を考えていたのかについては定かではありませんでした。松陰は高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、山縣有朋らを育てた教育者ですが・・・


松下村塾.jpeg

                              (萩・松下村塾)


 <軍事を担っているのは武士ですが、それは人口の数パーセントにすぎません。脅威は海の外から来ます。島国日本の長い長い海岸線を守るのに、外国に立ち向かう兵力は武士だけ。そんな話は数量的にも現実的ではない。もっと多くの人々を兵士として動員しなければならない。そのためには、あらゆる階級に対しての教育が必要だ。そう考えたのです。>・・・こういう考えが長州の身分を問わない奇兵隊という組織へと繋がっていくのでしょう。



 福沢諭吉といえば来し方を振り返った『福翁自伝』は、とらわれの無い快活な書きっぷりで自由な精神が感じられ楽しい本でした。今ではお札の代名詞になっていますが・・・



<福沢にとって、お金について語ることは決してみっともないことではなかったし、むしろ真っ先にお金の話をすべきであるとさえ考えていました。さらには、もったいないと思ってお金使わないことは、資本主義の健全な発達を阻害するものであると考えていたように思います。つまり「みっともない」と「もったいない」という、江戸以来続いてきた儒教的な規範、武家道徳を打破したのが福沢諭吉なのではないでしょうか。>・・・お札の顔に相応しい人だったのでしょう。



 こんな調子で各人につき20数頁ずつで紹介されています。名前は知っていても、著書を手にしたことのない人が何人もありますが、手際よくまとめられて、何となく分かった気にしてくれます。いかにも新書的な楽しみを満たしてくれる本です。







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