海馬と遊ぶ [雑感]
ウクライナの戦況をテレビで見ていると、「正露丸」のことを思い出しました。特有な臭いのする丸薬を子どもの頃に呑まされました。大人になって知ったのですが、明治時代、日露戦争に出征する兵士に、食あたり水あたりの薬として携帯させたそうで、「征露丸」という名前だったそうです。
戦後になって対外的に不穏当だろうと、「征」の行にんべんを取って「正露丸」と改名したのだそうです。
実家が薬関係の仕事だったので、虚弱ぎみだったわたしは色んな薬を呑んだ記憶があります。なかでも熱が出て下がらなかった時に、サイの角の粉末である「犀角」というのを呑まされたのを覚えています。本当にサイのツノだったかは不明です。
そういえば「龍角散」というのがありますが、名前からタツノオトシゴが入っているのだろうかと見てみると、杏仁、甘草などの植物性生薬で出来ているようです。
タツノオトシゴ(hippocampus)は漢字では海馬と書かれ、薬として用いられた歴史があります。内臓を取り除き天日干ししたものだそうです。薬種商であった祖父の家の軒先にはマムシが何匹も干してありましたが、タツノオトシゴは見た記憶はありません。
人間の脳の中にも海馬と呼ばれる部位があります。記憶に重要な働きをしており、アルツハイマー型認知症に関与していますが、部位の形がタツノオトシゴに似ているのだそうです。
歳をとると何につけても色んな記憶が蘇ります。いわば自分の海馬で遊んでいるようなものかも知れません。