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コケって何? [読書]

 本を読んでいると、これは何と読むのだろうという漢字に出会うことがあります。先日も「虚仮」という文字がありました。< わしを虚仮にしおって・・・> という文章です。前後関係から「コケ」だろうとは思うのですが、では「虚仮」とは何だろうと辞書*を引いてみました。


 コケ【虚仮】(名・形動)(一)〔仏〕実体がないこと。また、真実でないこと。(二)考えのあさはかなこと。おろか。(無名抄)。(接頭)むやみにそうする意を表す。「一未練」《一に・する》ばかにする。一おしみ【一惜(し)(み)】をしみ むやみに物惜しみをすること。一おどし【一《威(し)】(一)浅薄なおどかしかた。「検校の居間に一と筋一(柳樽)(二)外見はもっともらしいが、中身はたいしたことがないこと。(後略)


どうも元々は仏教用語のようなので、仏教辞典**も見てみると・・・


 虚仮 こけ 漢語としては, 実の伴わないこと, いつわり. 用例は『墨子ぼくし』修身に見える. 仏典では, 真実の反意語であるが, 文脈によって二義がある. 一は, 虚空こくうと同じく, もろもろの事象が空虚で実体性を欠いていること(如来不思議秘密大乗教5など). 二は, 虚妄こもうと同じく, 心や行為が真実でないこと. うそ, いつわり(維摩教菩薩品). 外に善を装い, 内に虚偽こぎを懐いた行為を《虚仮之行こけのぎょう》という(観経疏4)(後略)


 こんな難しい言葉が、どんないきさつで誰もが使う日常語になったのか不思議です。お坊さんの説教にでも出てきたのか、また、歌舞伎か落語のセリフで広まったのでしょうか?


 落語の「こんにゃく問答」は旅の禅僧とこんにゃく屋のやりとりで笑わせますが、噺を作ったとされる幕末の二代目 林家正蔵は元は僧侶だったそうです。してみれば、いつの頃か、「虚仮にしおって!」と舞台か高座でしゃべった芸人もいたかも知れない、と想像するのも楽しい空想です。


*『新潮国語辞典 第二版』(山田俊雄 築島裕 小林芳規 白藤禮幸 編集 新潮社)

**『岩波 仏教辞典』(中村元 福永光司 田村芳朗 今野逹 編 岩波書店)





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