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よみがえる詩句 [読書]

 19歳ごろ、南海電車に乗って、吊り革を持って車外を眺めていると

   腕にたるんだ私の怠惰

   今日も日が照る 空は青いよ

という中原中也の詩句が頭にうかびました。 丁度その頃、角川書店から『中原中也全集』が出ていたので、すみずみまで読みました。その後は遠ざかりました。


 最近、本屋さんに佐々木幹郎『中原中也 沈黙の音楽』(岩波新書)という本が並んでいました。そばを通るたびにちょっと中身をながめたりしていたのですが、まぁいいかと戻していました。そのうちに見えなくなりました。


 それが先日、また棚に立てられていました。まぁいいかと買ってきました。五十年まえの記憶が蘇ってきます。


    「一つのメルヘン」
      秋の夜は、はるかの彼方に、
      小石ばかりの、河原があって、
      それに陽は、さらさらと
      さらさらと射してゐるのでありました。
 
      陽といっても、まるで硅石か何かのやうで、
      非常な個体の粉末のやうで、
      さればこそ、さらさらと
      かすかな音を立ててもゐるのでした。
 
      さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
      淡い、それでゐてくっきりとした
      影を落としてゐるのでした。
 
      やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
      今迄流れてもゐなかった川床に、水は
      さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました......


       #「在りし日の歌」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2017-12-09

     #「いざ鎌倉」 https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2018-01-08

 

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