春日というところ [読書]
このあいだテレビのニュースを見ていると、奈良の興福寺のお坊さんたちが、隣の春日大社に詣でて、柏手をうち、読経していました。長年の行事とのことで、まさしく神仏習合です。その時ふと思ったのですが、「春日」と書いてなぜ「かすが」と読むのでしょうか?
調べてみると、「はるひ(春日)の」は「かすが」という土地の枕詞なのだそうです。「飛ぶ鳥の」が「あすか」の枕詞なのと同じで、枕詞が地名表記になったということです。
春日大社は 768年、藤原不比等によって建立され、藤原氏の氏神も祀っています。藤原氏はもとは中臣氏で、その前は卜部(うらべ)氏だったそうで、祭祀にかかわる一族だったとのことですが、中臣鎌足より前は謎に包まれています。また鎌足は『大鏡』では、< その鎌足のおとど生まれたまへるは、常陸国なれば・・・ > と書かれているそうです。*
それと関係があるのか、春日大社は四座の神を祀っていますが、第1が鹿島から、第2が香取から勧請しており、次に祖先の天児屋根命(あめのこやねのみこと)と比売神(ひめのかみ)という順になっています。**
三笠山の東方、7Kmほどに大柳生という町があります。柳生の南西7Kmほどのところです。白洲正子によれば、この高原盆地一帯を古く「春日」といい、豪族・春日氏の所領であったそうです。大柳生の人々は、春日大社とのつながりが深く、古来、若宮の「おんまつり」には氏子として奉仕するならわしがあるそうです。**
奈良公園には鹿がたくさん群れていますが、鹿は春日大社の神の使いだそうです。これから春にむかって、若草山の山焼きや二月堂のお水取りなどの行事が続きます。
石(いは)ばしる垂水(たるみ)の上のさわらびの
萌えいづる春になりにけるかも (万葉集 志貴皇子)
* 朧谷寿『藤原氏千年』(講談社現代新書)
**白洲正子『道』(新潮社)
近いせいもあって、子供の頃の学校行事は
奈良や京都が多かったですね。
ほとんどが寺院巡りで、どこがどこだったか
大人になってからは、交通の便もあって
京都はよく行きますが奈良は遠のきがち。
若草山の山焼き、二月堂のお水取り
テレビニュースで見るばかりです。
by そらへい (2023-01-17 19:48)
そらへいさん、白洲正子の本を読んでいると、
滋賀県のことがよく出てきます。三上山とか
向源寺とか・・・。本を読みながら、あちこち
散策している気分です。
by 爛漫亭 (2023-01-17 20:13)
埼玉の東にある春日部市は春日だけど、読みは"かすかべ"と言う。
常陸国から持ってきた名だとすると、実は"かすか"の方が
正しいのかな?と思ってしまったり(笑)。
by tai-yama (2023-01-17 22:52)
とても勉強になりました。
地名は調べると面白いですね。
by yoko-minato (2023-01-18 06:45)
tai-yamaさん、春日部市は春日山田皇女の料地が
あった所ということと関係があるようです。
また1944年までは「粕壁」だったそうです。
by 爛漫亭 (2023-01-18 07:30)
yoko-minatoさん、地名にはいろんな歴史が詰まって
いますね。普段、なにげなく使っていても、調べてみて
驚きます。
by 爛漫亭 (2023-01-18 09:15)