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ヘッセのさすらい [読書]

 ヘルマン・ヘッセといえばドイツの作家と思いますが、確かに 1877年にドイツ南部のカルフという村で生まれていますが、35歳以降はスイスに住み、1924年にはスイスに帰化しています。『デミアン』などの中期以後の作品はスイスで執筆されています。

 

 彼は少年のころから学校になじめず、退学を繰り返し、仕事も転々とします。書店員をしながら詩や小説を書き、詩集を自費出版します。小説『車輪の下』は 1906年の作です。


 1914年に第一次世界大戦が勃発したとき、詩人や学者までが排他的な愛国心を煽る宣伝に同調するのに対し、ヘッセは「おお、友よ、そんな調子はよそう!」という論説を新聞に掲載します。ヘッセはたちまち「裏切り者」、「売国奴」と総攻撃をうけます。ナチス政権時代にはドイツでの出版ができなくなります。結局、ヘッセは1962年、85歳で他界するまで、スイスの南部、イタリア語圏の小村に住み続け、同地に葬られることになります。


   「眠りにつく時」 (H.ヘッセ)


  今や昼は私を疲れさせる、

  私の憧れの願いは、

  疲れた子供のように

  星の輝く夜を親しく迎えることだ。


  手はあらゆる行為をやめ

  額はすべての思考を中止せよ。

  今や私のすべての感覚は

  仮眠に落ちこむのを欲している。


  そんな霊魂は、見張られずに、

  自由な翼でただよおうとする。

  夜の魔法の国で

  深く千倍もながらえるために。

           (門馬直美 訳)


 この詩は 1948年、リヒャルト・シュトラウスが曲を付け、歌曲集『四つの最後の歌』の一曲となっています。さまよい、さすらったヘッセをしのばせる詩曲です。


#「「春」という歌」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2021-04-18


 


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