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「春」という歌 [音楽]

 リヒャルト・シュトラウスの『四つの最後の歌』の第1曲は「春」というヘルマン・ヘッセの詩に曲をつけたものです。オーケストラを従えソプラノが唄います。


              「春」

           薄暗い洞穴の中で、

    私は長い間夢をみていた。

    お前の樹々と青い大空と、

    お前の香気と鳥の歌について。

 

    今やお前は輝きと装飾の中に、

    私の前に奇蹟のように

    光を一杯に注がれて、

    横たわっている。

 

    お前は再び私を知り、

    やさしく私を誘う。

    お前の幸福な姿に

    私の身体はわなないている。

           (門馬直美・訳)


 初めて聴いたのは、もう30年もまえで、キリ・テ・カナワという歌手がウィーン・フィル(G.ショルティ指揮)の前で唄っているものでした。甘美で、気品のある声と音に酔いしれました。以来、『四つの最後の歌』のCDを見かけるたびに聴いてみましたが、なかなか楽しめませんでした。どうしてもキリ・テ・カナワと比較してしまいます。


 昨年だったか、評論家がディアナ・ダムラウという歌手がバイエルン放送交響楽団(マリス・ヤンソンス指揮)と録音したCDを激賞していたので、取り寄せて聴いてみました。確かに良い歌声で楽しめました。でもやっぱりそのあと、キリ・テ・カナワの声の天上的な響きが聴きたくなってしまいます。


 そこでふと思ったのですが、これは案外、演奏の良否によるのではなく、単に最初に聴いて感激したCDがファースト・コンタクトとして心に刷り込まれてしまった結果なのかもしれません。人間はいつまでも初めての衝撃に囚われて生きているのでしょう。


 『四つの最後の歌』は「春」のあと「九月」、「眠りにつこうとして」とヘッセの詩の歌が続き、第4曲はアイヒェンドルフの詩「夕映えの中で」の歌となり、だんだんと諦念、慰安、浄化といった雰囲気の音楽に包まれ静かに消えてゆきます。リヒャルト・シュトラウスの白鳥の歌です。





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