今年も残り少なくなって来ましたが、来年はどんな年になるのでしょう。今年は75歳になって、後期高齢者と称ばれるようになり、余命が意識されるようになりました。確かに持ち時間は少なくなっているのでしょうが、仕事を離れると、1日が永く時間を持て余します。時間を決めて運動や散歩をし、読書(最近は家内に朗読してもらうことが多い)や音楽の時間などを割り振って1日をやり過ごしています。



 この4年間は新型コロナと持病のために、旅行もままならず、人混みも避けているうちに、気力、体力が低下したようで、高齢者にとってこの4年間は大きな時間のロスだったように思います。



 さて、今年読んだ本で何が印象深かったかと振り返れば、年初に読んだエマニュエル・トッド『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(文藝春秋)が刺激的でした。、核家族、父系制、直系家族といった「家族システム」の違いが、社会や国家の成り立ちを決めているといった目からウロコの話が次々と語られ、世界の見え方が変わる気がしました。アメリカ人は狩猟採集時代のホモ・サピエンスと同じように、核家族で自由主義で、武器で自衛する社会で生きているなどとフランス人らしい言説も面白い。



 次に感銘を受けたのは、吉村昭『白い航跡』(講談社)で、明治時代に脚気(かっけ)という病気の原因を、疫学的調査で「白米食」にあると突き止めた高木兼寛の話です。著者の緻密な調査と筆力に読み応えのある伝記小説となっていました。



 この秋に読んだのは、足立巻一『やちまた』(河出書房新社)でした。本居宣長の長男で、「日本語の動詞の活用の法則を見つけた」盲目の国学者・本居春庭についての伝記的記述と、それを書くに至った著者自身の自伝的記述が織り交ぜられた浩瀚な本でした。



 吉村昭もそうですが、最近は物語よりも伝記や歴史物に興味があるようです。以前よく読んだ村上春樹の小説には、もう十年以上も縁が切れています。来年はどんな本や音楽と出会えるか楽しみにしています。そして気ままにどこかへ旅行にも出かけたいものです。



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#「カッケと肉ジャガ」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2023-04-25

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