四十代のころ、八月の第1週になると夏休みをとって、毎年、長野県に出かけていました。中央高速道路で恵那山トンネルを抜けると別世界にきたような気がしました。湿気と気温がさがり、日常業務からも解放されて、爽快でした。


 高遠から北上して杖突峠に着くと、前方に八ヶ岳がみえ、眼下に諏訪湖から甲州への展望がひらけ、地形図をそのまま見渡している気分になります。正面にみえる霧ヶ峰を歩くと、槍ケ岳と富士山が左右に望めます。


 なぜ、あんなに毎年、信州に行っていたのか不思議なくらいですが、涼しさの誘惑が大きいのでしょうが、また、十代のころになじんだ詩の舞台でもあったからだと思えます。浅間山、千曲川、追分、美ヶ原などを巡り歩くのは、歌枕を旅するのと同じことです。


 少年のころ読んでいたのが、吉田精一『日本近代詩鑑賞』明治篇、大正篇、昭和篇という新潮文庫だった・・・今から思えば変なこどもだった。 成長して変なおじいさんになっただけだったかも知れないが・・・。


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