唄をめぐる話 [音楽]
秋が過ぎて行こうとしています。秋の唄を見ていると「'Tis Autumn」というのが有りました。「'tis」って何だろうと辞書をひくと「it isの短縮形」とあります。〔tiz〕と発音するそうです。そういえば英語の曲名には「`」が付いたのがいくつかあります。
「'S Wonderful」とか「'Round Midnight」とか・・・「`s」は「it's」の短縮形で「'round」は「around」の省略形のようです。
中学生のころ「`」をアポストロフィ(apostrophe)と習った覚えがあるのですが、難しい名前です。辞書や英文法書をみても、言葉の意味の解説はありません。
「`Round Midnight」はピアニストのセロニアス・モンク等が1944年に器楽演奏のために作曲し「`Round About Midnight」という曲名だったのですが、後に歌詞が付いた時に、about が取れたそうです。
和田誠さんの訳*では< それは真夜中ごろ始まる。日暮れまで私は大丈夫。夕食時に悲しく、最悪なのは真夜中。想い出は真夜中ごろにやってくる。(後略)>といった唄です。
演奏ではマイルス・デイヴィスのものが有名ですが、1954年に T.モンクとM.デイヴィスが共演したとき、この曲ではないですが、マイルスがモンクに、自分のソロのバックにはピアノを弾くな、と言ったそうで、モンクは頭にきて殴り合い寸前になったそうです。* `Round Miles といった逸話です。
1986年、『Round Midnight』という映画が作られた時には、「`」が無くなっています。サックス奏者のデクスター・ゴードンがアカデミー主演男優賞にノミネートされ、ハービー・ハンコックが作曲賞を受賞したそうです。
*和田誠『いつか聴いた歌』(文藝春秋)
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