お相撲さん今昔 [スポーツ]
立冬も過ぎ木枯らしが吹くようになりました。大相撲は九州場所の季節ですが、『蕪村句集』を見ていると「秋之部」に相撲の句がありました。
負(まく)まじき角力(すまひ)を寝ものがたり哉
頭注には「負けるはずのない相手に不覚の黒星を喫した力士が、その夜の寝物語に愚痴をこぼす。それをやさしく慰める妻。/豊かな情感を独自な抑揚にこめてペーソスが漂う。」とあります。
毎年、七月(旧暦)に宮中で相撲(すまひ)の節会(せちゑ)が催されたので、相撲は秋の季語。また動詞「すまふ」(抵抗する意)の名詞形が「すまひ」とのことです。妻がやさしく慰めたかどうかは分かりませんが、十七文字で物語の世界を創り出すのは見事です。
『蕪村句集』を編纂した門人の高井几董にも相撲の句があります。
やはらかに人わけゆくや勝角力
勝った力士の雰囲気が目に浮かびます。師弟で相撲談義がはずんだのでしょうか。二人は京の人ですが、江戸川柳では「壱年を廿日(はつか)でくらすいゝ男」というのがよく知られています。当時は一場所が晴天十日で、春夏二場所だったそうです。*
今場所は、照ノ富士が故障で休場し、横綱不在が続いています。先場所優勝の大の里が連続優勝して、一気に横綱に昇進するのでしょうか? 前頭西十六枚目に再入幕してきた故障上がりの尊富士は活躍できるでしょうか? また東十六枚目の新入幕・獅司はウクライナ・ザポリジャの出身で話題になっています。1960年代の大横綱・大鵬もウクライナ人のハーフで、色が白くて強く人気がありました。
そういえば、このあいだ新聞で「大谷の二つ下だよ貴景勝」という句を万能川柳欄で見かけました。力士は怪我が多く、”いい男”でいるには、年に二十日とは言わないまでも、もう少し興行を減らして、体を養生できるようにしたらどうかと思います。
*神田忙人『江戸川柳を楽しむ』(朝日選書 朝日新聞社)