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地政学て何? [読書]


 ロシアのウクライナ侵攻以来、「地政学」または「地政学的」という言葉をよく目にするようになりました。なんとなく言葉の雰囲気は分かるのですが、あらためて具体的な内容となると思い浮かびません。そんなおり毎日新聞の書評欄で佐藤優が奥山真司『世界最強の地政学』(文春新書)という本を取り上げ、「・・・傑作だ。アングロサクソン(英米)流の地政学に関する最良の教科書でもある。」と紹介していたので読んでみました。



 著者によれば「地政学とは「地理をベースとした国際政治、外交政策についてのものの見方、考え方」ということだそうです。ナポレオンは「地図を見せてみろ。あなたの国の対外戦略を当ててみせる」と言ったそうです。印象的だった事柄を私なりにまとめてみました。



 地政学において重要な概念として「シーパワー」と「ランドパワー」ということを取り上げていました。海洋での活動に重きを置くイギリスや米国がシーパワーの国で、ロシアや中国はランンドパワーの国。



 ランドパワーの国は歴史的に常に周辺からの侵略の脅威にさらされています。ロシアはモンゴル帝国に250年間近く支配され、ナポレオンやナチス・ドイツに攻められています。中国は周辺勢力による元や清のような征服王朝に支配されています。ロシアは外からの侵略を恐れ、周辺に緩衝地帯を置こうとします。中国は万里の長城を築きました。恐怖のなせる所業です。



 ナポレオンが16年かけてもイギリスに勝てなかったのは、イギリス海峡の制海権をイギリスに握られていたからとのことです。シーパワーとは制海権によって航路、港湾を確保し、物流、兵站、情報などをコントロールする力です。



 かってイギリスや米国はスエズ運河、パナマ運河を支配下に置き、南アフリカ、インド、シンガポール、フィリピン、香港などを支配下もしくは影響下に置き、またインド洋と太平洋を結ぶマラッカ海峡の航行を守り、軍事基地を各地に保有しています。



 海にしろ陸にしろ、ルートとチョーク・ポイント(線と点)も地政学に重要な事項です。道、砦、港、航路など物資や兵隊の移動に欠かせない施設で、各国にとって歴史的に重要視される場所があります。



 たとえばロシアが対外進出しようとする時、バルト海はかつてはロシアの内海で、日本海海戦ではバルチック艦隊が遠征してきました。次に黒海に面したクリミア半島とバルカン半島から地中海へ、アフガニスタン・インド、ポーランドからドイツ、シベリアからウラジオストクという5つのルートがあるそうです。現在はバルト三国もポーランドもEU加盟国になっています。



 なんとなくロシアがウクライナに侵攻した地政学的な誘因が見えるようです。冷戦に敗れ緩衝地帯が無くなり、直にNATOと向き合う恐怖が根底にあるのでしょう。



 中国については、世界の工場となっていますが、人口比でみれば資源大国ではなく資源や食糧の輸入と製品の輸出のため、自由経済システムに依存しています。航路の安定が重要になっており、現在は米国によるマラッカ海峡の保全などに頼っています。中国が南シナ海など航路への進出を企てている理由だそうです。



 日本は海に囲まれていますが、シーパワーの国ではなく、ランドパワー的思考があるそうです。明治時代から陸軍がランドパワーの国であるドイツに学んだ影響で、ロシアの南下を恐れ、朝鮮半島や満州に緩衝地帯を作ろうとしました。



 個人に思考のクセがあるように、国家にも身についた戦略があるようです。米国は第2次世界大戦に勝利すると、次はソ蓮に対抗するために、かっての敵国である日本、ドイツと手を組み冷戦に勝ち、日本がのし上ると関税などで貿易戦争をしかけ、中国がGDPで2位になると対抗措置を採ります。3位と手を組み2位を追い落とすという戦略です。



 著者は1972年横浜生まれ。イギリスの大学で地政学を学んだ国際地政学研究所上級研究員だそうです。世界の動向を理解する上で地政学的な視点というのも参考になると教えてくれた一冊でした。


#「歴史から現在を見る」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2024-03-09


世界最強の地政学 (文春新書)

世界最強の地政学 (文春新書)

  • 作者: 奥山 真司
  • 出版社: 文藝春秋
  • 発売日: 2024/04/19
  • メディア: Kindle版

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