敦賀のあたり [雑感]
今年3月から北陸新幹線が敦賀まで延伸されたのですが、関西から北陸へは、今までは特急「サンダーバード」で直行できたのが、これからは敦賀で新幹線に乗り換えなければならなくなりました。不便になりました。お客さま本位というなら、直行便を復活して欲しいものです。
敦賀はほとんど通り過ぎるばかりで、車で出かけた時に一度立ち寄ったことがあるだけです。駅前の店でアマエビを食べたのですが、後で下痢になり困った思い出があります。また北陸からの帰りに高速を敦賀で降りて、若狭の小浜を通り、鯖街道で京都へ出たのは楽しい記憶になっています。
敦賀といえばレッドソックスへ行った吉田正尚選手やバファローズに来た西川龍馬選手の出身校の敦賀気比高校が思い浮かびます。良い指導者がいるのでしょう。敦賀には気比神宮というのがあって、「奥の細道」の帰路、松尾芭蕉も参拝しています。<【旧暦八月】十四日の夕暮、敦賀の津に宿を求む。/その夜、月殊に晴れたり。「明日の夜もかくあるべきにや」と言へば「越路の習ひ、なほ明夜の陰晴はかりがたし」と、あるじに酒すすめられて、気比の明神に夜参す。*>とあります。翌日はやっぱり雨だったそうです。
以前読んだ泉鏡花『高野聖』という小説には敦賀が出てきました。汽車の中で<・・・聞けばこれから越前へ行って、派は違うが永平寺に訪ねるものがある、但し敦賀に一泊とのこと。/若狭に帰省する私もおなじ処(ところ)で泊まらねばならないのであるから、そこで同行の約束が出来た。**>という訳で、二人は敦賀の宿に同宿する。眠るまでの時間を、高野聖に諸国行脚でのおもしろい話をしてくれるよう頼むと、僧が語り始めたのが、飛騨から信州へ越える道で遭遇した奇々怪々な出来事で、読者を別世界へ誘い出して行きます。
敦賀のあたりは魚の美味しい所で、20年ほど前に三国で、ノドグロという焼魚を食べ、こんなにうまい魚があるのかと驚いたことがあります。アカムツとも称ばれるそうですが、白身なのに全身に油が多く、しかもあっさりしています。そのとき連れていた息子は、味が忘れられないのか、数年前に三国へ行ったけれど、あの店が無くなっていたと残念がっていました。北陸から若狭にかけて、また出かけたいなと心が弾みます。
*冨山奏校注『新潮日本古典集成 芭蕉文集』(新潮社)
**泉鏡花『高野聖』(青空文庫)