今年の「この3冊」 [読書]
年末になると、新聞の書評欄が楽しみです。この一年に出版された本から、書評担当者が "これは” と思った本を選んで発表しています。毎日新聞では、2週間にわたって 35人の評者が3冊ずつ採り上げ、百語ほどの解説を付けています。選ばれている本は重複がありますので、100冊程になります。
毎年、この欄を見ながら、来年はどの本を読もうかと参考にします。また、川本三郎、三浦雅士、荒川洋治、養老孟司といったお気に入りの評者が、どんな本を挙げるのかも楽しみです。また、自分が今年読んで面白かった本を、誰かが推薦していないかという興味もあります。
今年、最も多くの評者に選ばれていた本は、鷲見洋一『編集者ディドロ 仲間と歩く『百科全書』の森』(平凡社)で、4人が採り挙げていました。同書を選んだ評者の一人、文芸評論家の湯川豊は「(前略)『百科全書』とは何か。膨大な資料を駆使してそれを成立させた背景までを書ききっている。(後略)」と述べています。それだけの人に選ばれるからには、文句なしの好著なのでしょうが、約 900頁の大著なので、実物を見ないで取り寄せるのはためらわれます。書店でどんな本か見てみたいものです。
フランス文学者の鹿島茂と元外交官の佐藤優が、エマニュエル・トッド『我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上・下』(堀茂樹訳 文藝春秋)を選んでいました。鹿島は「(前略)家族人類学理論の集大成。(中略)人類の歴史が新しい角度から解釈され、未来への展望が披露される。」と書いています。
また、日本史家の磯田道史は石崎晴己『エマニュエル・トッドの冒険』(藤原書店)という本を採り挙げています。E.トッドが多くの人に関心を持たれていることが分かります。彼は 1976年に、人口統計学的に、10~30年後にソ連邦が崩壊(1991年)すると予想したことで知られており、その後もイギリスの EU離脱やトランプ政権の誕生を言い当てているそうです。
E.トッドが人類の未来にどんな展望を示しているのか? この本は読んでみたい気がします。2023年がどんな年になるのか、ウクライナ、ロシア、コロナ、北朝鮮、中国、エネルギー、温暖化、円安など不確定な要因が山積しています。
わたしの蟄居生活も4年目になろうとしています。どんな展望があるのか? トッド先生のご高説を拝聴したいものです。