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雪が降る 言葉が積もる [雑感]

 今年は雪が多いようです。南国の当地でも先日は薄っすらと雪化粧でした。豪雪地帯の雪おろしなど、想像もできませんが、紙の上で雪国を体験します。言葉は新しい視野を開いてくれます。


   「 雪 」  三好達治


 太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。

 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。


 10年程まえ何処だったか、蓼科のあたりの山の上で、この詩を書いた詩碑を見たように思うのですが記憶が曖昧です。ただ、こんな場所より野尻湖のあたりのほうがこの詩に合っていると思ったのを憶えています。




  さいはての駅に下り立ち

  雪あかり

  さびしき町にあゆみ入りにき    (石川啄木)


 明治41年1月、漂泊のはてに釧路駅に着いたときの回想。当時、釧路が終着駅だったそうです。




  まぼろしの白き船ゆく牡丹雪  (山川蟬夫)


 幻想的な言葉遊びで、雪の雰囲気が上手く表現されています。



 

   「 見えない木 」  田村隆一


 雪のうえに足跡があった

 足跡を見て はじめてぼくは

 小動物の 小鳥の 森のけものたちの

 支配する世界を見た

 たとえば一匹のりすである

 その足跡は老いたにれの木からおりて

 小径を横断し

 もみの林のなかに消えている

 瞬時のためらいも 不安も 気のきいた疑問符も そこにはなかった

   (後略)


 一瞬にして新しい世界が展けます。言葉は別世界への通路です。小説にしろ、評論にしろ、詩歌にしろ、それによって見たことのない視界が現れなければ楽しみがありません。


 雪が降れば、言葉が積もる。



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