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ススキ原で [徘徊/旅行]

 先日、秋の晴天を、かっての同僚と生石(おいし)高原に出かけてみました。標高 870メートルの頂上付近は一面のススキ原です。ここに初めて登ったのは1967年の春で、大学の新入生歓迎ハイキングでした。当時は海南から野上電鉄というのがあって、終点の登山口駅から歩きました。今回は道がよくなっているので山上の駐車場まで車で行きました。


 なんとなく風景の感じは覚えていましたが、はるか西北に大阪湾が見渡せます。これだけのススキ原が毎年見られるのは、早春に山焼きをしているからだそうです。


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 日浦勇『自然観察入門 草木虫魚とのつきあい』(中公新書)には <人間の伐採・火入れなどで裸の土地ができた場合、ススキ草原→アカマツ林→カシ・シイ林、いいかえれば、草原→陽樹林→陰樹林という変化が長年月のうちに進行する。> とあります。


 ススキやアカマツの種子はパラシュートや羽をもっていて、風にのって遠く広くひろがれるのに対し、ドングリの転がる範囲は狭い。そしてススキは数年で成長し、アカマツは数十年かかる。(山焼きをすれば毎年、ススキ原になる)


 ところが、ススキは日当たりを好むから、アカマツが育てば日陰になって衰退する。また、カシやシイの幼木は暗い林床でも生長できる陰樹であるのに対し、アカマツの幼木は日当たりがよくないと生長できない陽樹なので、カシ・シイが育つと日陰になってアカマツは生長できず、最終的にはカシ・シイの林になるのだそうです。遷移という現象です。


 半年ほどまえ、わが家の前の建物が解体され、更地になりましたが、いまは雑草が茂っています。街中に更地ができると夏なら2ヶ月ほどで草ぼうぼうになります。 空地に<繁茂したのはメヒシバやオヒシバ、エノコログサ、イヌビエ、スベリヒュウなどであった。> と唐沢孝一『目からウロコの自然観察』(中公新書)には書いています。


 そして <5〜6年で風散布種子のススキやセイタカアワダチソウなどの多年生植物が進出してくる。10〜20年が経過すると鳥散布種子のアカメガシワ、クワ、センダン、エノキ、ムクノキなどの木本植物が目立つようになる。街中に居ながらにして、草地から林への遷移を垣間見ることができる。> そうです。


 家の前の空地も、観察すれば何十年でも楽しめるのでしょう。興味があればですが・・・。


  秋の日のずんずと暮て花芒(すすき) (夏目成美)


#「キョーミと観察」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2018-04-23

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