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トンボの秋 [読書]

  やっと秋らしい気温になってきましたが、雨が降ったり曇ったり、天候が不順でした。今週からは安定した青空が見られるようです。赤トンボが群れて飛ぶ姿が眺められるかもしれません。


  さわやかに流れて来てはひるがへり

    風にい向ふ蜻蛉(あきつ)の群(むれ)は (中村三郎)


 赤トンボにもいろいろな種類があるようですが、秋によく見るアキアカネは6月中旬ころに水田などでヤゴから一斉に羽化し、その後、不思議なことに平地からは姿を消し、涼しい高原や高山に移動するそうです。色も成熟するまでは淡い褐色だそうです。


 秋の訪れとともに避暑を終え、成熟して平地に下りてきます。赤い雄と一部が赤い雌が一列に連結して飛ぶ姿も見られ、また輪になった姿も見られ、水辺で産卵します。


 アキアカネは羽化後、そのまま暑い平地で過ごすと早く成熟して産卵、孵化してしまい、越冬できない。卵で越冬するために猛暑を涼しい高原ですごし、卵巣の成熟を抑制し、産卵の時期を秋に延ばしているのだそうです。


 氷河期に大陸から南下して、日本各地に分布したタイリクアキアカネが、その後の温暖化で日本列島が大陸から切り離され、取り残されたのがアキアカネなんだろうということです。(唐沢孝一『目からウロコの自然観察』中公新書)


 『日本書紀』では、神武天皇が丘に登り、国を眺め、狭い国だが、蜻蛉(あきつ)が交尾したような形だと言ったそうで、それが秋津洲(あきつしま)という名のおこりだそうです。縦に繋がった形を思ったのか、輪状に繋がった形と見たのかは不明です。(奥本大三郎『虫の文学誌』小学館、山田宗睦訳『原本現代訳 日本書紀(上)』ニュートンプレス)


 トンボは4枚の羽根をそれぞれ個別に動かすことができるそうです(日高敏隆)。蝶々とはまた違った優雅な飛行の姿です。


  現身(うつしみ)のわれをめぐりてつるみたる

    赤き蜻蛉(とんぼ)が幾つも飛べり (斎藤茂吉)


#「キョーミと観察」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2018-04-23

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