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おかしな英語のなりたち [読書]

  ことばの成り立ちを知るのはおもしろいものです。日本語がどんな風にできたのかは難しい問題のようですが、長男の子供が中学生になったので、英語の歴史を振り返ってみようと、本箱からジェーン・サーノフ『絵本 英語辞典』(青山南訳 晶文社)を取り出してみました。


 <紀元前 55年に、ローマの将軍ジュリアス・シーザーがヨーロッパ海岸の沖合にある島を征服しました。この島をシーザーは Britain (ブリテン)と名づけましたが、ここで暮していたのはケルト人たちでした。かれらがつかっていたことば、つまりケルト語の名残りはいまでもアイルランドやスコットランドやウェールズ地方の一部で聞くことができます。>


 Alan,Allan,Allen, Kenneth, Murray, Yvonne などはケルト人の名前だそうです。


 400年ほどして配置されていたローマ人は出て行ったのですが、彼らはケルト人と付き合わなかったので、ローマ人の使っていたラテン語はほんの少ししか残っていず、ほとんど軍隊生活に関するもの、castle(砦) のようなことばだけだそうです。


 <守ってくれていたローマの軍隊がいなくなると、ケルト人たちの豊かな畑や土地はノースマンたちやデーン人やピクト人たちに侵略されました。そこでケルト人は、北海の向こう側で暮していたゲルマン人系の民族、つまりアングル人とサクソン人に助けをもとめました。>


 200年もたたないうちに、ブリテン島にはケルト人よりアングル人とサクソン人のほうが多くなって、ケルト人は島の北と東の端っこに追いやられました。


 アングロ・サクソン語は、みじかい、あっさりしたことばで、farm, field, home, roof などはブリテン島に上陸したときからしゃべっていたことばだそうです。


 <アングル人とサクソン人は微妙にちがう古期ゲルマン語をつかっていましたが、このふたつのことばとケルト語・ラテン語のいくつかが、いまつかっている英語のはじまりでした。>

 

 9世紀になるとノースマン(バイキング)たちが船でやってきて住みつき、古期ノルウェー語をもちこみ、たとえば sky, skin, ski といった sk ではじまる英語はほとんど古期ノルウェー語由来だそうです。


   1066年、大陸から海峡を渡ってやってきたノルマンディ公のウイリアムがアングロ・サクソン人を征服し、彼らが王様や貴族となりました。ノルマン人が使っていたのは古期フランス語の一種でした。宮廷ではフランス語が使われたので、フランス語がだんだんと英語に入り込みました。


 fork, dinner, curtain, price, cash などはフランス語由来だそうです。


 15世紀頃になると、教会、法廷や宮廷、学問などの影響からラテン語やギリシャ語が英語に入ってきて、接頭辞(pre-,ex-,im-など)、語幹、接尾辞(-er,-able,-fulなど)といった複雑なことばの構造が出来あがってきたそうです。


 いまの英語を作っているのは 600,000個のことばだそうですが、英語をしゃべる国の普通の大人はだいたい 15,000個のことばを知っていて、毎日のおしゃべりの 99パーセントは 1,600個のことばでできあがっているそうです。


 いろんなことばが混ざり合っているせいか、英語の発音とスペリングは奇怪千万で、<英語がこの世に出現してからいままで、英語がきちんと書けたひとはいつの時代もほとんどいませんでした。書けたひともスペリングが重要だとは考えていませんでした。なにより大事なのは理解することだったのです。(中略)スペリングを気にするようになったのは 19世紀の半ばになってからのこと> だそうです。


 <ほっときゃいいんです。かまうもんですか。いつか、きっと、耳で聴いたことをきちんと書けるようになりますから> と著者のジェーン・サーノフは書いています。コロナ禍で出遅れた新・中学生たちも楽しく英語と親しんでほしいものです。




絵本英語辞典―日常英語のコトバ200語辞典

絵本英語辞典

著者:ジェーン・サーノフ

絵:レイノルド・ラフィンズ

訳者:青山南

  • 出版社: 晶文社

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