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バッタとイナゴ [読書]

  むかし信州へ旅行した帰りに、小魚の佃煮を買ったつもりだったのですが、帰って開けてみると、飴色の虫がぎっしり詰まっていました。間違って隣にあったイナゴの佃煮を取ってしまったようです。いまだに脚を屈して並んでいた虫の姿が目に浮かびます。


 日本では「蝗」という漢字をイナゴと読みますが、漢字の実体はトノサマバッタやサバクトビバッタのことのようです。『虫の文学誌』(奥本大三郎著 小学館)によると・・・


 <これらのバッタは、通常は緑色で翅(はね)が比較的短い「孤独相」と呼ばれる姿をしていて、単独で生活しているが、一定の環境の中で、多数の個体が爆発的に発生すると、翅が長く、色の黒い「転移相」、そしてその傾向のさらに進んだ「群生相」というものになり、群れをなして移住を開始する。これが飛蝗(ひこう)である。> とのことです。更に、


 中国の『宋史』によれば、乾徳2年(964)河南省安陽市付近で発生した飛蝗の群れの大きさは 22×11 Kmにもなったそうです。飛蝗は天を覆い日を遮り、暴風雨さながらの轟音にとざされ、通過した後は、緑という緑が食い尽くされ、見渡す限りの裸地になってしまうそうです。


 ちょうど今、サバクトビバッタの大群がアフリカからインドにかけて大移動しているようですが、旧約聖書の時代から、蝗害は各地で度々記録されており、飢饉の原因になっているようです。


 日本の古典で「虫」といえば、秋の鳴く虫ですが、キリギリスやコオロギなどと同じようにバッタやイナゴも直翅目(ちょくしもく)に分類されるそうです。ただ、キリギリス、コオロギの仲間の触角は女性の髪の毛のように細く長いですが、バッタ、イナゴの仲間の触角は太くて短いという違いがあるそうです(前掲書)


 ここのところ毎日、熱帯夜が続いて寝苦しいですが、虫の音が聞こえる夜が待ち遠しいですね。


  初秋(はつあき)の蝗(いなご)つかめば柔かき (芥川龍之介)



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