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短篇小説のための手引き書 [読書]

  好きな菓子袋を抱えて、ボリボリ食べる幸せ、そのうち残り少なくなってくる悲しみ・・・おもしろい本に出会った時の幸福感と読み終わる名残惜しさはそれ以上かも知れません。


 昨年末の毎日新聞の書評担当者が選ぶ「2019 この3冊」にルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』(岸本佐知子訳 講談社)が数人に取り上げられていたので買ったのですが、最初の4篇を読んでどうもしっくりこないなと本箱にしまいました。


 その時、そばにアーウィン・ショー『緑色の裸婦 アーウィン・ショー短篇集』(小笠原豊樹訳 草思社)があって、見ると 1983年9月に購入し、そのまま本箱に立っていたようです。37年も経ったのかと、読み始めてみるとこれが結構おもしろい。好きな菓子袋のように心になじみます。


 何がおもしろいのか、短篇小説のあらすじを書くのはとても難しく、またあらすじを書いたからおもしろみが分かると言うものでもないでしょう。一口でいえば「男というもの」がよく描かれているなと感心しました。1篇読むたびに、僕にもこんなところあるよなと思い当たったり、また、どことなく登場人物に似た友人の顔が思い浮かんだりします。


 そこで、ふと思って、『掃除婦のための手引き書』を「この3冊」に挙げたのは誰だったんだろうと調べてみると、作家の角田光代と中島京子でした。やっぱりと自分の思いつきに手を打ちました。短篇小説には男性用と女性用があるんじゃないだろうか? 『掃除婦の・・・」が女性用なので私がなじめなかったんだとすると腑に落ちます。


 因みに角田光代は『掃除婦の・・・』について「どの短編小説にも人生の断片が息づいている。遠いだれかの人生のはずなのに、ひゅぅと私の内側に入ってきて、思いもかけない力で揺さぶる」と書き、中島京子は「おかしみ、悲しさ、衝撃、郷愁を胸の奥から引っ張り出されるような読書体験だった」と評しています。


 そうかな・・・と評言に首をひねります。そういえば、チェーホフなんかは男性用なんだろう、家内に「かわいい女」を見せると、どこが面白いのと聞き返します。 私がまた『掃除婦のための手引き書』を本箱から取り出すことはあるだろうか?


#「こころに残る短篇小説」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2019-06-24


掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/07/09


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