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ピアノ・ソナタの世界 [音楽]

  時間があるので、一度、ベートーヴェン(1770-1827)のピアノ・ソナタを全部、聴いてみようと、日に数曲ずつ CDをかけてみました。32曲あるので十日ほどかかりました。演奏は J.B.ポミエというフランスのピアニストです。彼の名は宮城谷昌光の本で知りました。


 ピアノ・ソナタ第1番は作品2で1795年、第32番は作品111で1822年の作です。なかに数曲、「悲愴」とか「月光」、「告別」といった呼び名のついたのがあります。


 わたしのような音楽の素養のない、ピアノを習ったこともない人間にとって、毎日、ピアノ・ソナタを聴くのは、思った以上に退屈でした。その日の数曲の中に「悲愴」とか「熱情」といった名前のついた曲があるとホッとしました。呼び名のついた曲は耳に馴染んでおり、すぐ音の世界に入り込めます。


 評論家の吉田秀和は『私の好きな曲』(ちくま文庫)に最後の第32番ハ短調を挙げ、<私は、この曲には、驚嘆と畏敬をおぼえる一方で、限りない愛着を感じる。>と書いています。同曲について、小説家の宮城谷昌光は「バックハウスのピアノを聴いていると、この曲は良否を超越したところにあると思われてきた。」と記しています(『クラシック 私だけの名曲 1001曲』新潮社)。


 宇野功芳は『クラシックCDの名盤 大作曲家篇』(文春新書)でベートーヴェンで一番好きな曲として、ピアノ・ソナタ第18番がまっ先に頭に浮かぶと述べています。同書の共著者、中野雄は W.ケンプの弾く第14番「月光」、第17番「テンペスト」の見事さには語る言葉を失うとしています。


 いろいろな先人の言葉を読みながら、自分の感受性の至らなさに愕然とします。32曲を聴いてみても、いいなぁと思ったのは、結局、以前から知っていた「有名な曲」だけだったというのは徒労感に襲われます。そのうちにいろんな曲の良さが分かるようになるのだろうか? 



 <ピアノ・ソナタ32番>


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