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冬の旅 [音楽]

  昨年末にテノール歌手のペーター・シュライヤーが他界されたのを新聞で見て、彼の歌う『冬の旅』を聴いてみたくなり、HMVで取り寄せるようにしましたが、まだ届きません。


 そういえば以前、梅津時比古『冬の旅 24の象徴の森へ』(東京書籍)という本を買ってきましたが、積んだままだったのを引っ張り出してきました。CDが届くまでの楽しみに読み始めました。


 シューベルトの歌曲集『冬の旅』はヴィルヘルム・ミュラー(1794-1827)の詩に曲をつけたものですが、全24曲からなっています。なかでは第5曲「菩提樹」がよく知られています。


 しかし、第1曲から聴き始めると、だんだんと陰鬱になり、気が滅入り、最後には幻覚におちいったような状態に至ります。一生にそう何回も聴くようなものではないと思えてきます。事実、わたしも最後に聴いたのがいつだったか思い出せないくらいです。


 梅津時比古は芭蕉をひきあいに出して・・・ 

 <『おくのほそ道』は、実は「ほそ道」を歩いているのではない。弟子を従えて基本的に主要な「街道」を歩いているのである。そのことが象徴するように、この「ほそ道」における漂泊は、日本文化の「大道」になった。/『冬の旅』では主人公の青年は決して「街道・通り道」(Straβe)は歩かない。全曲を「道」の観点から調べると、たとえば第十三曲『郵便馬車』の冒頭に「通り道から郵便馬車のラッパが響いてくる(原文略)とあるように、注意深く言葉の位置関係がとられていて、青年は常に街道から離れており、Wegなどのまさに「ほそ道」、あるいは「道なき道」を歩いていることが分かる。/そのうえシューベルトは、第二十曲『道しるべ』の詩のなかでは、ミュラーが用いている街道(Straβe)を、脚韻を壊してまでほそ道(Weg)に変更しているのである。>


 実に微細に『冬の旅』を分析しており、今まで気づかなかった面を多々教えてくれます。巻末にはCD評も付いていて、わたしの注文したCDについては <全体に歌い手とピアニストのそれぞれの持ち味が生かされているとは言えず、・・・この演奏は買わない。>と書いていました。


 CDはいつ届くのか、まだ何の連絡もありません。しばらくは梅津時比古と付き合っているほかありません。



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