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サザンカの咲く道 [読書]

「さざんかさざんかさいたみち」という童謡があります。サザンカといえば赤い花を思い浮かべますが、杉本秀太郎 安野光雅『みちの辺の花』(講談社学術文庫)を見ていると


 <白い花がうとんじられて、色花がこのまれるのは、はたして趣味の改良だろうか。赤い山茶花(さざんか)も、赤い山査子も、白い山茶花、白い山査子に数等劣るように思えて仕方がない。・・・露骨に人為の加わった新品種の花を見ても心がときめかず・・・>とあります。サザンカはもともとは白い花だったんだと知りました。そして・・・


 <『芭蕉俳諧七部集』のとっかかり『冬の日』の真っ先に置かれた歌仙、芭蕉の発句につづく野水(やすい)の脇句にとび散る山茶花が赤かったら、あの歌仙はそこでもうおしまい。>と続き


   狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉 芭蕉

   たそや とばしる かさの山茶花    野水


 < やぶ医者のなれの果ての狂歌師竹斎に似たようなわたくしながら、どうかよろしくという芭蕉の挨拶に、野水があるじ格として応じるーー山茶花の花が笠のうえにぱさりと音立てて散りぢりになる木枯らしのなか、笠傾けて、いそぎ足でお越しになった客人はどなたでしょう、と。これが当節の赤い山茶花などであってはたまらない。> とのことです。


 ところで金田一春彦によれば、サザンカは漢字では山茶花と書くように、山に咲くお茶の木に似た花という意味なので、サンザカであったものが、ひっくり返ってサザンカとなったそうです。昔、アラタシといっていたことばを、今ではアタラシというのと同じとのことです。また、和歌山県の方言にはこの傾向が顕著で、トサカがトカサ、カラダがカダラ、などという例を引用しています(『ことばの歳時記』新潮文庫)。


 最近はたきびというものはあまり見かけません。落葉もゴミになって捨てられます。焼き芋はスーパーで買うものになっているようです。せめて白いサザンカの咲いている道でも見つけられればいいなと思います。


#「「だらしない」と「ふしだら」」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2019-12-12



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