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言葉なんて [雑感]

 先日、四人目の孫が誕生しました。女児です。名前はまだ付いていないようです。名前がないと、まだ社会に属していない無垢な赤ん坊の感じがします。なんと呼びかけようか、とまどいます。あらゆるものに名前がある社会に、生まれ出たまだ名付けられていない生命体です。


 名前を付けることによって、社会に紐付けされます。星々を結びつけて星座ができ、ブリ起こしと称ぶことによって雷も社会に組み込まれます。漱石の猫には名前がないので、世間の埒外から、世の中を眺めます。


 「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」というのは詩人・田村隆一の嘆きですが、「初めにことばがあった」(ヨハネによる福音書)と言われてしまえば、嘆いてもせんないことです。陳腐で月並みな言葉であふれた世界に、新しい星座を描くように、新しい関係を発見する・・・詩人の栄光です。


 新しく生まれた赤ん坊はぼんやりと目の前の世界を眺めています。これから、この世界とどんな風につながっていくのか? わたしにもそんな眩しい一瞬があったはずですが、いまは思い出せません・・・。



 

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