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似顔絵という世界 [読書]

  和田誠の新しい似顔絵や挿絵が見られなくなったのは寂しいかぎりです。新聞や雑誌、本の装丁や表紙など、いつも身近にあったイラストが無くなるのは不思議とも感じられます。それだけ長い間、知らぬまに彼の描く似顔絵の世界になじんでいたのでしょう。


似顔絵物語 (白水uブックス)

似顔絵物語 (白水uブックス)

  • 作者: 和田 誠
  • 出版社: 白水社
  • メディア: 単行本
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  •  和田誠(1936-2019)は小学生のとき、担任の先生の話から、新聞の清水崑の政治漫画を見るようになり、似顔絵を描くようになったそうです。中学・高校のころは授業中ほとんど先生や同級生の似顔絵をノートに描いていたとのことです。
  •  中学生から映画にも熱中し、高校生では雑誌「映画の友」のスタアの似顔絵投稿欄に、毎月、投稿するようになる。多摩美大・図案科に入り、三年生のとき応募した映画ポスターで日本宣伝美術会賞を受賞し、すぐに講談社からコラムの似顔絵の注文がきたそうです。
  •  美大卒業後、デザイン会社に就職。1966年に『吉行淳之介軽薄対談』(講談社)の装丁と挿絵を依頼される。1968年からフリーになり、「週刊サンケイ」の表紙に似顔絵を描くようになる。第1回は野坂昭如。
  •  <「週刊サンケイ」最大の思い出は七〇年十一月の出来事でした。・・・アパートの入口にサンケイの記者が待っていて、「何やってたんですか。早く部屋に入って下さい」と大声で言うんです。ドアを開けようとすると、「早くテレビをつけて」と言う。せっかちな人だなあと思って「何事ですか」と聞いても「いいから早く」とせきたてる。・・・自衛隊に三島由紀夫が乗り込んだというニュースをやっている。実況です。「あれー、どういうわけだ」とぼくがテレビを見ると、「早く描いてください」と言うんです。「早くって何を」「決まってるじゃないですか、三島さんです」・・・彼の勢いに押されて、三島さんを描きました。楯の会の制服を着て日の丸の鉢巻きをしている姿です。>
  •  『似顔絵物語』には和田誠の小学校低学年ころに描いた似顔絵から始まり、たくさんの似顔絵が掲載されています。清水崑、岡本一平、山藤章二、宇野亜喜良、横尾忠則、安西水丸などの描いた似顔絵もでてきます。和田誠の軽妙な語り口で似顔絵が時代の雰囲気とともに楽しめます。
「出かけてみたい場所」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2019-10-21


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