SSブログ

出かけてみたい場所 [読書]

  どこかへ出かけようと思ったとき、どんな判断で行くところを決めるかは、人それぞれでしょう。いつも決まった場所に出かけるひと、いままで行ったことのない所から選ぶひと。また、何か対象を決めて、鉄道を乗りまわるひと、街道・古道・細道を歩くひと、お寺巡りをするひと、城をめぐるひと。


 むかし、レンブラントの絵をすべて観てしまうつもりだという人と旅行で一緒になったことがありました。その後、年賀状のやりとりをしていましたが、毎年、各地の美術館に出かけ、何年かして、年賀状に全部観たと書いてきました。45年ほど年賀状だけの付き合いが続きましたが、一昨年だったか、出した年賀状が返ってきました。どうしたのか・・・


 イラストレーターの安西水丸(1942-2014)の『ちいさな城下町』(文春文庫)は「旅の楽しみの一つとして、何処か地図で城址を見つけ、そこを訪ねることがある。」とし、北は天童市から南は新宮市、東は三春町から西は朝倉市まで、21の城下町に出かけた旅行記です。「ぼくの城下町の好みは十万石以下あたりにある。」というように村上市、行田市、土生町、西尾市、沼田市といった、あまり城下町としての印象も、場所もはっきりしない町の話が、彼の挿画や身辺雑記とともに載っています。


 飯田市(長野県)の項は <父親は女のことで母を困らせたという。祖父を継いで建築家になった父は、建築家よりも画家になりたかったらしい。子供の頃から絵を描くことが好きだったぼくに、母は口を酸っぱくして言った。/「お願いだから絵を描く人にだけはならないでくださいね」> といった話から始まり、父親の残した絵のなかに赤穂浪士の赤垣源蔵を描いた絵があったことにおよび、源蔵が飯田藩士の子として生まれていることから、彼の生誕地を訪れる旅になる。


 ちなみに、源蔵は藩主の国替えで播磨竜野に移り、次男だったので後に、浅野家家臣赤垣氏の養子になり、赤穂浪士の事件に行きあう巡り合わせとなったそうです。


 安西水丸は本名、ワタナベ ノボルだそうです。どこかで聞いたような名前です。「三春町・二本松市」の稿が2014年2月号の雑誌に載り、同年 3月に彼は他界しています。『ちいさな城下町』(文藝春秋)が刊行されたのは没後です。この本には彼の生い立ちの話がたくさん出てきます。思うところがあったのでしょうか。




ちいさな城下町 (文春文庫)

ちいさな城下町 (文春文庫)

  • 作者: 安西 水丸
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/11/10
  • メディア: 文庫

 

nice!(14)  コメント(4) 
共通テーマ:日記・雑感