なんばん由来 [食物]
最近のトウモロコシは甘みが増して、柔らかいのが多いようです。こどもの頃はナンバと言っていました。アメリカ大陸が原産で、コロンブスが持ち帰り広めたそうです。日本には 16世紀に伝わったので、南蛮渡来でナンバと京都、大阪ではよんでいたようです。
トウモロコシは唐諸越黍で、中国からきたキビ(黍)という意味で、トウキビという地方も多いようです。名古屋や福井ではコウライと言い、高麗黍から来ているそうです。トウワ、トナワと飛騨高山から美濃、近江、越中でいう所があり、唐粟の意味だそうです。<堀井令以知『ことばの由来』(岩波新書)>
モロコシ(諸越)は越(エツ)の諸国という意味から出て、唐土を表しているそうですが、モロコシという穀物もあり、コーリャンのことだそうです。
前書は江戸時代の国語辞典『俚言集覧』に「なんばん 大坂にてねぎのこと」とあると書き、「そば・うどんの上に鴨の肉・鶏肉とネギを煮てのせた鴨南蛮は誰でも知っている」とし、かってはネギもナンバンだったようだと書いています。 ただ、ネギは5世紀には既に中国から伝来し、本邦では古くからなじみのある食物なので、そんなに長くナンバン伝来の意識が残るものか疑問です。
大阪ミナミのナンバ(難波)はナニワ(浪速)から派生したそうです。
また、「なんば歩き」という言葉があり、昔の日本人はゴリラのように少し腰を落とし、同側の手足を前に出して歩いていたというのです。それが明治になって兵隊の訓練で、西洋式に対側の手と足を出す歩き方が強制されたそうです(三浦雅士『身体の零度』講談社選書メチエ)。
歌舞伎や相撲では確かに同側の手足が前に出ます。しかし、日本古来の歩き方が、なぜ「なんば」と呼ばれるのか不思議です。元来、その歩き方が南蛮風だったのか? 分からなくなります。
そういえば当地の名物に「なんば焼」というカマボコがあります。命名の由来は製法が南蛮由来とのことです。
台所のトウモロコシを眺めていると、こどもの頃に夏の畑に林立していた黄色く硬いナンバを思い出し、連想がいろいろに発展します。