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晩秋の風情 [読書]

 今朝はしぐれが降っていました。このあたりでも紅葉が見られるようになりました。「猿も小蓑をほしげなり」といった感じです。


 柳田国男は『雪国の春』で「・・・京都の時雨の雨はなるほど宵暁ばかりに、物の三分か四分ほどの間、何度と無く繰返してさつと通り過ぎる。東国の平野ならば霰か雹かと思ふやうな、大きな音を立てゝ降る。是ならば正しく小夜時雨だ。夢驚かすと歌に詠んでもよし、降りみ降らずみ定めなきと謂つても風情がある。」と書いているそうです。時雨は京都盆地のものだということでしょう。


 「風情」といえば、このあいだ書店で文庫棚を見ていると、岡茂雄『本屋風情』(角川ソフィア文庫)というのがあって、買ってきました。著者は出版業をしていた方ですが、柳田国男から「本屋風情(フゼイ)」と言われたことがあり、この本の題名にしたそうです。


 本は、柳田国男から、田辺の南方熊楠を訪ねたいきさつを聞いた話から始まっています。民俗学に関係した人の話題が続いています。日曜日には池内紀が毎日新聞の「今週の本棚」で取り上げていました。


 先週、西行の直筆を見てみようと博物館に行きましたが、どういうわけか、南方熊楠の原稿も展示されていました。毛筆で、和紙に小さな文字が異様にぎっしりと書かれていたのが印象的でした。


   楠の根を静にぬらす時雨かな (蕪村)


#「金田一先生の事件簿」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2019-05-12

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