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師弟の機微 [読書]

 去年、読んだ『不思議の国のアリス』(亜紀書房)の訳者・高山宏は『先生とわたし』(新潮社)の著者・四方田犬彦と共に由良君美の門下生だったそうです。由良君美は慶応の大学院で西脇順三郎のゼミで江藤淳の三年先輩だそうです。西脇は由良君美をかわいがり、江藤淳をひどく嫌っていたそうで、「今日は江頭君が来ているから教室に出ない」と言ったという逸話が残っているそうです。

 『先生とわたし』は四方田犬彦が師・由良君美について、またその関わりについて書き、師弟関係一般についても言及した読み応えのある本でした。

  「きみは最近、ぼくの悪口ばかりいい回っているそうだな」
  わたしが呆気にとられて返答を躊躇っていると、彼は突然に拳骨を振
  り上げ、わたしの腹を殴りつけた。

 これが四方田犬彦が師・由良君美に最後に会った場面だそうです。

 「わたしは自問する。はたして自分は現在に至るまで、由良君美のように真剣に弟子にむかって語りかけたことがあっただろうか。」

 教え教えられる関係の始まりから、乗り越え乗り越えられる情況まで、教育の意味があらわになります。


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