対談の楽しみ [読書]
池内 紀といえばドイツ文学者でエッセイスト。残念ながら 2019年に亡くなりました。『東海道ふたり旅 道の文化史』(春秋社)という本を面白く読んだばかりだったので驚きました。
川本三郎は文芸・映画評論家。今年は『『細雪』とその時代』(中央公論新社)を興味深く読みました。この二人の対談集『すごいトシヨリ散歩』(毎日新聞出版)が本屋に出ていたので買ってみました。それにしても何という題名なんでしょう、手に取るのがためらわれました。
川本 いま、医者から心臓の精密検査をしようと言われているんですが、怖いからイヤだイヤだと逃げ回っていて(笑)。
池内 三十年間かかりつけの医者がいて、ぼくより若いから「最期まで診てくださいね」と言っていたのに、その人が死んじゃった。先日わかったんです。心配はしていたんだけど、主治医が先に逝くなんて、サギにあったみたい(笑)。
川本 アメリカのコメディアンでジョージ・バーンズという人がいたんですけど、彼は九十過ぎまで現役バリバリで、得意のネタがあった。インタビューを受けると、ブランデーを飲みつつ、葉巻をプカプカ吸いながら、「女の子とも遊んでいる!」みたいなことを話す。インタビュアーはびっくりして、「そんな生活をしていて、主治医は何もおっしゃらないんですか?」と尋ねると、「主治医はとっくに死んだ」(笑)。
たわいもないトシヨリの世間話です。池内は昭和15年生まれ、川本は19年で、二人は普段から仲が良かったそうで、一人暮らしの川本を心配して、会ったあと数日して、池内から「上着、カビくさかったですよ。クリーニングに出すように」という手紙が来たと「あとがき」に書いています。
対談は『望星』という月刊誌に2016年9月号から2019年9月号まで載せたものだそうです。その時の題は「にっぽん そぞろ歩き」だったとのことです。だらだらと二人の旅や映画や本の話に付き合っていると無為な時間が過ぎていきます。こんな時もあってもいいかとページを繰ります。
若い頃、この方の翻訳本をよく読んだ気がします。
最近では「すごいトシヨリBOOK」を読みました。
私が勝手に描いていた繊細な学者というイメージとは違って、
案外破天荒というか剛毅な方なんだと思いました。
面白かったです。
by そらへい (2021-12-15 21:00)
そらへいさん、「すごいトシヨリ」というシリーズ名
なんですね。池内紀はカフカ全集を翻訳するという大業を
成していて、エッセイなども楽しめますね。亡くなられた
のは残念です。
by 爛漫亭 (2021-12-15 22:34)
お医者さんが完全な健康体とは限らないと・・・(笑)。
by tai-yama (2021-12-15 23:52)
tai-yamaさん、昔から医者の不養生と
いいますね。
by 爛漫亭 (2021-12-16 08:58)
池内先生、亡くなってしまったのでやすね。
あっしは、カフカの変身の訳のお仕事が印象深いでやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2021-12-18 20:25)
ぼんぼちぼちぼちさん、池内紀は多能な
人でしたね。もう新刊が読めないのは残念
です。
by 爛漫亭 (2021-12-18 20:46)