事件の核心 [読書]
日本ではコロナ感染が急速に終息しつつあると感じられますが、ワクチンの効果なのか、ウイルス自体が自滅したのか原因も分からないままです。ワクチンの効果とすればドイツなどでの再拡大は不思議です。何でだろうと首をかしげているうちに、南アフリカで新たに見つかったオミクロン株という変異ウイルスが成田にやって来ました。
一般には、「未知との遭遇」は時間とともにお互いに馴れて無害化する方向に向かうはずですが、まだ関係が安定するに至っていないのでしょう。
ちょうどこの間から、アフリカが舞台の小説を読んでいました。グレアム・グリーン『事件の核心』(小田島雄志訳 ハヤカワepi文庫)です。G.グリーンといえば映画『第三の男』の脚本が知られていますが、むかし何かで遠藤周作が彼の小説について言及していたのを見て、いずれ読んでみようと買っておいたものです。
<西アフリカの植民地で警察副署長を務めるスコービーは、芸術家肌で気まぐれな妻ルイーズに手を焼いていた。(中略)スコービーの前に、事故で夫を失った若い女ヘレンが現われ・・・英文学史上に燦然と輝く恋愛小説の最高傑作。> と裏表紙に印刷されています。
読了するのに1ケ月半かかりました。どこで事件が始まるのだろう、核心って何だろうと思いながら・・・どうもこの小説には入り込めないなと感じながらも、『第三の男』の脚本家なんだから、そのうちに面白くなるだろうと期待しつつ読み進みました。残り 30ページになっても事件は起こりません、きっと最後にどんでん返しがあるのだろうと思いましたが、大きな波乱もなく、主人公の静かな死によって終わりました。うむ、これは何なんだと、唖然としました。
恋愛に関して、西洋人と日本人には何か根本的な違いがあるのじゃないか? と不安な気持ちになりましたが、過去に読んだ小説や映画を思い返しても、そんな違和感を感じた記憶は思い当たりません。
この小説ではカトリック信者として生きるうえでは、離婚できない、自殺は地獄といった問題と現実生活との葛藤が描かれていると読めますが、『源氏物語』や『心中天網島』の国民にとっては切実感が湧きにくいのかも知れません。”恋愛小説の最高傑作” とは不適切な惹句じゃないかと苦笑しました。カトリックという精神世界があるのだと未知の領域を知らせてくれる読み物でした。
若い頃は、好んで翻訳小説を読みましたが、最近はさっぱりです。
まず登場人物の名前を覚えるのに時間が掛かってしまいます。
翻訳調の文章も、若い頃は好きだったのにいまでは鼻につきます。
向こうの小説を読んでいて必ずぶつかるのが宗教問題です。
神も仏もある日本人には理解できない問題ですね。
by そらへい (2021-12-01 20:04)
そうですね、そらへいさん。ただ外国の小説は
物語の要素が豊かで楽しいという面もあります。
日本では四畳半的、エッセイ的な小説が多いような。
それもまた良いのですが、その時の気分ですね。
若い頃、「ロビンソン・クルーソー漂流記」を
読んで、延々と宗教談義が続くのには辟易しました。
by 爛漫亭 (2021-12-01 20:37)