ハモの季節 [食物]
和歌山市の名草山の中腹にある紀三井寺の境内からは、海の向こうに沼島(ぬしま)が見渡せます。沼島は淡路島の南部にある離れ小島で、400人ほどが住んでいます。対岸の淡路島の土生港へは連絡船で 10分ほどです。わたしは上陸したことはありませんが、家内は中学生の時、クラブの合宿で行ったことがあるそうです。和歌山市と徳島市を結ぶフェリーに乗ると、間近に沼島が見られます。
『古事記』で伊耶那岐(イザナキ)の神が天の沼矛(ヌボコ)で海をかき回し、「引き上げたまふ時に、その矛の末より垂り落つる塩の累り積れる、嶋と成りき。これ淤能碁呂嶋ぞ。」* というオノゴロシマは沼島だという説があります。
夏になると、沼島ではハモ(鱧)漁が盛んになり、ハモ料理の店も数軒あります。ハモは日本の中部以南にすむアナゴに近い磯魚で、瀬戸内海に多いそうです。アナゴより大きく、歯がきつく、やたらと噛み付く魚なので「食む」がなまってハモになったという説もあるそうです。関東では獲れないので関心がないようですが、関西では夏の料理として知られています。身にそって縦にある小骨を「骨切り」します。昔から「一寸(3.3㎝)の身を二十五に切れ」と板前は教えられるそうです。**
湯引きを梅肉で食べる、天ぷら、すましに入れるなど色んな食べ方がありますが、わたしは骨で出しをとり、肉厚なのを鍋にして食べるのが好みです。以前は淡路島の魚屋さんから送ってもらったり、兄が送ってくれたりしていたのですが、7月になり、そろそろ今年もどうして食べるか思案し始めています。
箸先の鱧の牡丹を崩すかな (草間時彦)
* 西宮一民 校注『新潮日本古典集成 古事記』(新潮社)
**末広恭雄『魚の履歴書 下』(講談社)
約2年間のうち、魚を口に入れたのは、2回かも。(1年に1回!)国連事務所の人が呼んでくれてトラウトが食べれたのと、タイから輸入のサーモンを頂いたのと。魚の美味しい紀南から、魚のない国に来たのは、大きなカルチャーショックでした。ブータンでは、魚は神(仏)の使いとかで、誰も食べません。なんと釣りは違法です。練りわさびをスーパーで売っているのはどういう訳なんだろ。
by さっかん (2021-07-06 01:02)
釣りが違法とは驚きです。「生類憐れみの令」
なんでしょうね。先日は鳥春の鰻を買い、昨日は
タコを食べましたが、この季節、こんなゲテモノが
日本では相応しいようです。ご自愛ください。
by 爛漫亭 (2021-07-06 16:25)
当地では夏になると鱧料理です。
めったに出ないのですが、刺身ではなく鱧だと
がっかりしたものですが、
上手に骨切りした湯引き鱧を梅肉などでいただくと
おいしいことを大人になってから知りました。
by そらへい (2021-07-27 21:31)
鱧の湯引きを梅肉でというのが一般的ですが、
そらへいさん、骨で出汁をとって、新玉ねぎと
鍋で食べると最高ですよ。
by 爛漫亭 (2021-07-27 22:49)