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暑い夜に閑話 [読書]

  台風が通り過ぎて、一気に真夏になりました。今日は暑さになじんでいないせいか、体が少しふらつくような感じがします。この夏をどうやり過ごすか、思案します。


 この間から読んでいる森銑三『明治人物閑話』(中公文庫)には、井上通泰という人物が出てきます。眼科医で歌人、国文学者で、森鷗外と親交があったひとです。播州の生まれで柳田國男の実兄だそうです。


 著者の森銑三は昭和十年代ごろ、よく井上の別荘を訪れ、本を見せて貰ったり、雑談を聴いたりしたそうです。いろんな話が出てきます・・・


 <鷗外の両親のことを問うたのに、先生は答えて、森のおっかさんは清少納言で、幸田(露伴)のおっかさんは紫式部だと、僕等の仲間ではいっていたよ、といわれた。才女とまではいわれなかったが、とにかく才気の勝った婦人だったことを、十分に認めていられた。>


 <いつのことだったか、鷗外が使者となって、井上先生を訪問して、今度君に文学博士を贈ることになったから受けて貰いたい。しかしそれに就いては、大学側の連中とも、今後は融和して行って貰いたい、という意嚮を伝えた。しかしそれを聞いた先生は、納らなかった・・・そういう条件つきで文学博士となることなどは御免を蒙る。> 鷗外はそれ以上に一言も口をきこうとせずに、辞去したそうです。


 <私があまりに鷗外のことを聴きたがったからであろうか、いつだったか、鷗外の人物に就いて尋ねたら、うん、悪いことはせぬ男だった、と簡単な一言で片附けられて、それなりになってしまったこともあった。>


 この後、夏目漱石のこと、成島柳北、斎藤緑雨といった人たちの話題が続きます。暑い夜に寝転んで読むのにちょうどよい本のようです。


  #「時代の刻印」https://otomoji-14.blog.ss-blog.jp/2020-07-15

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middrinn

執拗に質問するのは森銑三らしい気がします(^_^;)
この本は、昔から買うリストに載せているんですけど、
ブックオフにはなくて(-ω-、) 御自愛下さいm(__)m
by middrinn (2019-07-29 08:28) 

爛漫亭

 この本は1989年に買って30年も置いたままに
なっていました。岩波文庫の『新編 明治人物夜話』
は、編者がここからも数篇とってますね。

by 爛漫亭 (2019-07-29 14:08) 

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