神話の住人 [読書]
新宮市の熊野速玉大社の境内に、佐藤春夫の詩碑があります。「望郷五月歌」の一節が陶板に焼き付けられています。近くには彼の旧居も移築されています。
塵まみれなる街路樹に
哀れなる五月来にけり
石だたみ都大路を歩みつつ
恋しきや何ぞわが古郷
あさもよし紀の国の
牟婁の海山
夏みかんたわわに実り
橘の花さくなべに
とよもして啼くほととぎす
心してな散らしそかのよき花を
朝霧か若かりし日の
わが夢ぞ
そこに狭霧らふ
朝雲か望郷の
わが心こそ
そこにいさよへ
空青し山青し海青し
日はかがやかに
南国の五月晴こそゆたかなれ
西脇順三郎は「文人佐藤春夫」という文章を書いています。
<五月頃になると南仏をおもわせるマロニエの樹に花が咲き、七、八月になるとノウゼンカズラの花が咲く。 この家の主人は門弟三千人をようしたという文人であった。>
新宮という町は背後に熊野の山々を背負い、南は太平洋にひらけていますが、隔絶された地域の雰囲気があり、神倉神社のお燈まつりなど、神話的な世界の匂いが漂っています。 佐藤春夫にもそんな種族のしるしが感じられるかもしれません。
神倉のご神体から火が生まれ、一面が炎に包まれる姿に感動して9年。御燈は8回登りました。女人禁制はいつまで続くのだろう。最近新宮に来られましたか。今こそ空青し、山青し、海青しで、車の屋根は全開で走ってます。
by akira (2018-05-15 22:10)
しばらく、ご無沙汰です。小麦粉がダメになって、鈴焼も食べられません。来年はクマノザクラを見たいものです。
by 爛漫亭 (2018-05-15 23:13)